購買、選択といった行動の裏側には、理由がある。人はなぜそれを買うのか、そういう行動をとるのか。こうした人間の行動にある心理や理由を分析してビジネスに役立てることができるのが「行動経済学」だ。近年、書店でこれに関する書物を見ることが増えている。
そこで簡単に「行動経済学」について学べる新書を5冊紹介する。仕事の休憩中や通勤時間などに学んでみてはいかがだろうか(文中の価格は紙版、税込み)。
行動経済学の基礎を手っ取り早く学べる一冊
『行動経済学-感情に揺れる経済心理』(依田高典著、中公新書、842円)
とにかく行動経済学とは何か、その基礎を学びたいのであれば本書がオススメだ。本書は行動経済学分野の第一線で活躍する著者によって執筆されており、入門書として優れた新書と言えるだろう。
本書のアプローチは学術的であり、勉強志向の内容になっている。経済学の課題・問題から発生した行動経済学の成り立ちが描かれており、近年の行動経済学の研究まで挙げられている。
なお本書は経済学についてある程度の知識があることが必要だ。また本書の解説は分かりやすさを重視しているため、深い解説を求める人には向かないかもしれない。
けれども、本書は一般的な行動経済学の基礎を学べること、また成立過程を学ぶことについては優れている。
事例に基づいて行動経済学の理解をしよう
『最新 行動経済学入門 「心」で読み解く景気とビジネス』(真壁昭夫著、朝日新書、756円)
本書も行動心理学の初心者向けの新書だ。こちらも行動経済学の第一人者として活躍された著者により執筆されている。
本書のアプローチは実務的な内容だ。東日本大震災で人々の行動や、個人投資家の投資感情など、より具体例を挙げて行動心理学が紹介されている。もちろん、行動経済学の基本となるような専門用語も解説されているので安心してほしい。
本書の内容は事実に基づくものが多く掲載されているため、サクサクと簡単に読み進めることができる。時間があまり取れないビジネスパーソンでも、楽しみながら、気楽に読み進めることができるだろう。
今まで行動経済学に触れてこなかった人でも手に取りやすい一冊としてオススメな新書である。
行動経済学の歴史を学びながら理解を深める
『行動経済学 経済は「感情」で動いている』(友野典男著、光文社新書、1,026円)
本書も入門者向けの行動経済学の新書と言えるだろう。行動経済学の礎を築いたカーネマンとトヴォルスキーの理論から丁寧に解説をした一冊になっている。
本書は新書にしては397ページとボリュームがある。行動経済学の具体例や解説が豊富で、一つ一つを理解しながら読み進めることができるだろう。また心理学サイドにも触れながら行動経済学の解説をしてくれている。
初版が2006年とやや古いので、最新の行動経済学を学ぶに物足りなさを感じる人もいるかもしれない。しかし、行動心理学の基本については網羅されているため、最初に読み始める一冊としてはオススメだ。
経済学寄りから行動経済学を理解できる一冊
『経済学的思考のセンス-お金がない人を助けるには』(大竹文雄著、中公新書、842円)
本書は社会の疑問に対して経済学の立場ならどのように答えるのかを記した一冊だ。決して行動経済学について丁寧に解説した新書ではない。
しかし、行動経済学について理解するには優れた一冊と言えるだろう。行動経済学は「経済人」への批判から成り立つ学問だ。経済人とは常に合理的な判断をして、最善の決断をする人のことを言う。本書ではこの「経済人」の考え方について学ぶことができるのだ。
本書では経済学的な考え方として「リスク」と「インセンティブ」を挙げながら説明をしている。また具体例を扱いながら執筆しているため、読み物として読むことができる内容だ。
行動経済学を学ぶ上では「経済人」についての理解は避けられない。行動経済学を深める上で他の新書と併せて一緒に読むといいだろう。
組織内での行動経済学を学べる一冊
『左遷論-組織の論理、個人の心理』(楠木新著、中公新書、886円)
行動経済学はどちらかというとマクロ的視点から見られやすい。ところが、本書は組織レベル、個人レベルで論じられている。つまり、実務的かつ経営学的な要素が多い一冊だ。
本書には日本での左遷をテーマに、企業にとっての左遷の意味合いや、個人から見た左遷のイメージなどが記されている。またその際にどのように個人が左遷に対処すべきかが執筆された新書だ。
ただし、本書は決して行動経済学に焦点を当てたビジネス書ではない。あくまで左遷のメカニズムを理解する上で、組織と個人の考えの差を学ぶことができる新書と言える。
もし他の行動経済学から一歩進んだ内容を知りたいのであれば、本書を手に取ってみるといいだろう。
ビジネスパーソンにおすすめする「行動経済学」系の新書を紹介した。新書では行動経済学の基礎を手軽に学ぶことができる。時間がない中でも短時間で行動経済学について理解できるので、手に取ってみるといいだろう。(吉田昌弘、ライター)
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