地方都市,地価上昇,広島カープ
(写真=PIXTA)

25年ぶりのリーグ優勝を果たしたプロ野球・広島東洋カープは、クライマックスシリーズでの活躍も期待されているが、その熱気は球場だけにとどまらず、地元広島県の地価にも変化をもたらしている。

広島県の地価調査(2016年7月1日基準)によると、県内の商業地は、前年の0.7%下落から一転し、0.3%の上昇。広島市内の商業地に限ると、伸び率は3.9%にも及び、東京・大阪・名古屋の3大都市圏の変動率(2.9%)をも上回る勢い見せている。今回は、地方の中枢都市にも及び始めた地価上昇の流れに迫る。

マツダスタジアム移転が契機

広島カープの本拠地がマツダスタジアム(広島市南区)に移転した2009年を境として、人の流れに変化が現れ始めた。駅からのアクセスが向上した球場には、熱狂的なファンが足しげく通い、カープのリーグ優勝の盛り上がりもあり、周辺は活況に沸く。こうした賑わいを取り組むべく三井不動産 <8801> などがマツダスタジアムに隣接した大規模複合施設「広島ボールパークタウン」の開発に着手。スポーツを中心とした洗練されたライフスタイルを提案すべく、ゲストハウス型婚礼施設やマンションの供給も進み、広島駅周辺の姿は様変わりした。

2016年の地価調査では、広島県の最高価格地点となった広島市中区本通り5の9は、15%の上昇を記録し、1平方メートル当たり240万円まで値を押し上げた。また、住宅地では、広島市中区白島中町8の8が9%上昇し、最高価格地点となった。この地点は、JR新白島駅の開業を受けてアクセスが向上。

マンションの分譲も進み、人気を集めている。勢いをみせる広島県内の不動産市況だが、一方で、その波に乗り切れないエリアも浮かび上がった。県内北部の安芸太田町の商業地は、前年比で8.2%のマイナスと大幅な下落となった。利便性が向上する広島市内中心へ集約化がより一層進み、県内でも2極化の傾向が続く。

中国地方では鳥取県にトレンドの変化が

同じ中国地方でトレンドの変化を見せたのが鳥取県。住宅地、商業地とも前年比で変動率は引き続きマイナスとなったものの、その下げ幅が鈍化し、前年は0だった地価上昇地点が、16年は住宅地で5地点、商業地で2地点が8年ぶりに上昇のトレンドに乗った。

住宅地では別荘地として開かれた伯耆町への移住の流れから、地価を押し上げたほか、米子や鳥取両市でも区画整理が進み利便性が向上したエリアの人気が高まり、需要をけん引した。商業地では米子市の2地点で、郊外型店舗や金融機関の進出などを背景に、それぞれ前年比で1.0%の伸びを示した。