日本でも徐々に導入されているフレックスタイム制度(総労働時間の枠内で、労働者が自主的に始業・就業時間を決めれる制度)だが、英国では高所得者の特権化傾向が強いことが非営利団体「ワーキング・ファミリーズ」の調査から判明した。

労働時間の選択にも所得格差がにじみでている現実を目の当たりにし、英国ではライフ・ワーク・バランスのとりやすい自営業に切り替える親も増えている。

フレックスタイム制度に理解のあるのは中小企業 8割が検討

労働者のライフ・ワーク・バランスを促進することで、効率的な労働環境の構築を意図するフレックスタイム制度。経過よりも成果を重視する欧米国では積極的に導入されている印象が強かったのだが、少なくとも英国の企業の受けとめ方はそれほど柔軟ではないようだ。

働く両親を支援するワーキング・ファミリーズが1000人の回答者を対象に実施したサーベイでは、年間所得7万ポンド(約896万円)以上の高所得層の47%がフレックスタイム制を活用しているのに対し、1万ポンドから4万ポンド(約128万円から512万円)の低・中所得層は勤務時間の自由を与えられるどころか、25%が「最低でも5時間は無賃金の時間外労働をしている」ことが明らかになっている。

高所得者ほど好条件で勤務可能な環境を提供されており、低所得者ほど割に合わない労働環境を余技なくされているという現実が、調査結果からあらわになっている。その結果、56%が「子供の就寝時間(寝かしつけ)が遅くなってしまう」と、仕事中心の私生活に不満を抱いている。

ワーキング・ファミリーズのサラ・ジャクソンCEOは、「フレックスタイム制度を希望する労働者の権限が、所得によってうばわれるのは不公平」と指摘しており、ここでも所得格差が表面化している事実を問題視している。

英国では産前・産後休暇は勿論、子育て期間を支援する制度が整っているものの、職場復帰が予定通りにいくかどうかは、実際に出産や子育てを経験してみない限りわからない。「子供とできるだけたくさんの時間を過ごしたい」という親心からそれぞれ家庭の事情まで、予定通りの復帰が困難な場合も多い。

そうした事情で勤務時間を減らす交渉が成立しても、結局は減らした時間を取り戻そうとする外部からの圧力が強く、仕事を継続しづらい状況におちいるパターンが多いという。また勤務時間を減らすということは、経済的な負担ものしかかることも意味する。

英国産業連盟(CBI)や英中小企業団体中央会(FSB)は、フレックスタイム制度の導入が従業員だけではなく、企業にとってもどれほど大きな恩恵をもたらすかという点に重点を置いている。

フレックスタイム制度に関しては大企業よりも中小企業の方が理解を示しており、FSBの調査では80%の中小企業が「フレックスタイム制度の導入を検討する」と回答している。(ZUU online 編集部)

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