イングランド銀行(BoE)のマーク・カーニー総裁は10月14日、BoEのイベント「フューチャー・フォーラム」で、経済政策への政治的介入を断固拒否する姿勢を明らかにした。

「量的緩和政策が高所得層には利益を創出する反面、低所得者の生活をさらに圧迫している」というテリーザ・メイ首相の批判を受けてのコメントだが、貧富の差を拡大させたキャメロン政権を引きずる方針に、低所得層からは反感の声があがっている。

貧富の差改善を目指すメイ政権 拡大により国家安定を目指すBoE

メイ首相は10月5日に開催された保守党カンファレンスに出席。低所得層にも優しい国づくりに励む意向を再度示すと同時に、大手企業の報酬・税金制度の見直し、「機能不全の経済市場」の修正などを求めるスピーチを行った。

その際2009年以降BoEが導入している低金利政策が「高所得層はさらに富み、低所得層はさらに苦しむという副作用を生みだしている」とし、BoEにその事実を認識するよう要請した。

富による富の創出に専念していたキャメロン政権が、取り残された一般庶民に失脚させられた「革命」を目の当たりにしたメイ首相。それまで覆い隠されていた「大英帝国の貧富の差」の改善に本気で取り組むことは、国家を統制する者として当然の最優先事項だろう。

低金利政策によって経済危機後の立て直しには成功したものの、その結果不動産バブルが巨大化したのは一目瞭然だ。そしてそのバブルをさらに膨張させるかのように、今年8月には英国史上最低水準となる0.25%にまで金利が引きさげられた。

Brexitによる影響を懸念しての決断ではあったが、この際低所得層からは不満の声があがった。低所得者が望むところは、所得の大半を食いつぶす住宅費の値下がりだ。過激な思想ではあるが、「バブルを崩壊させてでも住宅費をさげたい」と願うレベルまで、これらの人々は追いつめられている。

本心はどうであれ、メイ首相は低所得層の悲痛な声を代弁し、英国の社会構造を再編しようと積極的に取り組んでいる。しかしこうした動きを政治の介入と見なし、かたくなに拒絶するカーニー総裁との溝を埋めるには、相当の強制力が必要となりそうだ。

カーニー総裁はBrexitで基盤のゆらいだ英国で、「40万、50万人という失業者がでるのを回避する対策」として追加緩和に踏みきったと説明。年内には0.01%にまで引きさげられる可能性も報じられている。

どのような戦略があれど、富を増長させることで国家の安定を図るカーニー総裁の方針は、崩壊したキャメロン政権の延長戦上にあるという印象をぬぐえない。真逆の方向を目指すメイ政権との摩擦は避けられないだろう。(ZUU online 編集部)

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