尹煕元,財産ネット,荻野調,AI,株価予想,対談
(写真=筆者提供)

株価への織り込み時間はわずか1年で半分以上短縮

いまタイムラグという話がありましたが、私が書いた論文でも「ニュースはダイレクトに市場に影響を与えるのではなく、まるでスライムのようにぐにゃーと流れる」と指摘したんですが、株価に織り込まれるまでのタイムラグは日に日に短くなっていませんか?

荻野 短くなっていますね。特にラージキャップ(大型株)の場合は機関投資家が張り付いているので、ニュースが出て株価に織り込まれるまでの時間はたった数分の世界。個人投資家が気付くころには株価に織り込まれてしまっています。ですから予報を当てることは容易でも、「兜予報」で記事化してユーザーがチャンスを掴む時間がありません。

そこで、いま「兜予報」で対象としているのは中小型株です。そもそも大型株の値幅はせいぜい3%くらいでデイトレーダーにとっては旨味が少ないのですが、中小型株なら短時間でストップ高ストップ安まで動くことも毎日のようにあります。

そして、そのタイムラグは30分から1時間半くらいありますから、この間に当社が記事化し各アナリストがポジティブかネガティブかの投票をした上でユーザーがチャンスを掴む時間が残ります。中小型株といってもすべてが対象ではなく、デイトレーダーにとって面白そうな銘柄200種に絞って情報の分析と発信をしています。

ちなみに我々のシステムでは大型株の情報も収集しており、イベントが発生してから何分くらいで上昇し何分くらいで織り込みが終了するかという時間軸の予測計算も可能です。「兜予報」メディアとしては配信していませんが、ヘッジファンド向けにはそういったプロダクトも提供しています。

御社のサービスの影響でさらにタイムラグが縮みそうですね。

荻野 実際、サービスを開始した2015年の9月の時点で情報が株価に織り込まれるまで2時間くらいかかっていました。それが今では1時間を切るようになりましたので2倍以上早くなったことになります。我々の記事が株価の方向性を動かすことはありませんが、織り込み時間への影響がないと言ったらウソになるかと思います。特に我々のユーザーさんはSNSでリアルタイムに情報を拡散しますので。

トレーダーの判断を代行するサービス

では実際にどういったことを「予報」として発信されているんですか?

荻野 このサービスを考える原点となったのは株価に影響を与えそうなニュースが出てきた際に、それがプロ投資家がいる株式市場からみて「良い話」なのか「悪い話」なのかという判断を個人投資家ではなかなか出来ないからです。だったら、ニュースを配信すると同時にポジティブかネガティブかのシグナルを出してあげようと。

しかし、実際にはトレーダーが行う判断は「上がるか下がるか」だけでなく、「いつ」動くのか、そして「どれくらいの値幅」で動くのか。この3つがセットです。よって、「兜予報」ではこれら3つの軸をもとに、アナリストの投票と記事の配信時間を起点として1時間以内に5~20%の値幅が期待できるデイトレーダー銘柄として情報をまとめ、発信しています。

すべてですね(笑)。

荻野 そういうことになりますね。