世界の自動車生産台数ナンバーワンのトヨタ自動車と、世界10位で国内販売3位のスズキが10月12日に緊急記者会見を行い、業務提携に向けた交渉を開始したと発表し、業界に大きな衝撃が走った。

業務提携を超えた資本提携にまで踏み込むのではないかとの分析も国内ではみられる。また、これに先立って日産自動車の軍門に下った三菱自動車以上に、「カルロス・ゴーン日産社長が欲しかった会社、それが実はスズキであった」、つまりスズキの提携先としては「トヨタより日産の方が理に適う」(SBI証券アナリストの遠藤功治氏)との声も聞かれる。

こうした一連の、日本国内における自動車業界の大再編の重要な動きであるトヨタとスズキの業務提携について、海外メディアはどのように報じているのか。

スズキに有利だが、最終的にトヨタの利益が上回るとの見方

有力な欧米メディアは、「この提携がどのようなものになるか、現段階では不明」としながらも、短期的にはスズキにより大きな利益をもたらすことになると予想している。米『フォーブス』誌は、「両者の関係はスズキに一方的に有利なものとなろう」とする。

英『フィナンシャル・タイムズ』紙は、「(この提携の重要ポイントであるインド市場について)スズキがインドにおけるノウハウを、トヨタと分かち合うことはないだろう」とのCLSAキャピタルパートナーズジャパンのアナリストの見解を紹介。「トヨタは代わりに、スズキが持つ低予算でコンパクト化や効率化を実現するノウハウを求めている」とした。

一方、米『ニューヨーク・タイムズ』紙は、「スズキは自動運転や電気自動車などの、これから絶対に必要となる分野で、トヨタのスケールと資源の恩恵を受けることになる」とした上で、「たとえ部分的なものとなっても、業務提携は実質的にスズキを、より大きなトヨタの軌道に乗せることになる」と論じ、鈴木修スズキ代表取締役会長の「独立堅持宣言」にもかかわらず、スズキはいずれトヨタの支配下に置かれることになるとの見方を示した。

また、米自動車業界誌『オートモーティブ・ニュース』は、「(燃費偽装が問題となった)スズキは、適正な燃費試験施設への出費もままならない窮状にある。

成功(だったが、相手側の撤退で終了)した米ゼネラル・モーターズとの提携と、とんでもない失敗に終わった独フォルクスワーゲンとの提携の後に、懐が深い友好的な巨人(トヨタ)と結ぼうとするのは自然だ」と論評。「トヨタはスバル・マツダ・ダイハツ・日野・いすゞなどとの提携を通して、日本市場の実に65%をコントロールすることになり、スズキとの提携で、影響力を不動のものにするだろう」とのアナリストの見解を紹介している。

続けて『オートモーティブ・ニュース』は、「今回の提携発表がトヨタの施設で行われたことが、どちらのメーカーが運転席におり、どのメーカーが助手席に座っているのかを明らかにしている」と分析した。

いずれにせよ、両社の提携成功へ向けた決意は固いと見られており、『ニューヨーク・タイムズ』紙は、「トヨタとスズキのトップが公の場で、まだ内容も固まっていないパートナーシップを発表することは異例であり、両社が提携を合意に持ち込む決意の表れだ」と論じている。