焦点はインド市場での低価格ハイブリッド車発売

こうしたなか、今回の業務提携の目玉が、スズキが圧倒的なシェアを持つインド市場であることは、すべての欧米メディアが認めるところだ。米『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙は、「スズキが(トヨタに)提供するのは、インドでの先駆的なポジションだ」とまとめている。

『フォーブス』誌は、「この提携が、スズキの最重要提携先であるインドの現地法人マルチ・スズキにどう影響するかは、まだわからない。トヨタは、インド市場で47%という圧倒的シェアを誇るマルチ・スズキのディーラーや販売網を利用させてもらうことから始めるかもしれない」と予想。

インド市場が世界で最も急成長する重要拠点だとした上で、トヨタがスズキに対し、インド市場向けの小型車開発のノウハウも求めることになるかもしれないと言明した。これは、「スズキがインドにおけるノウハウを、トヨタと分かち合うことはない」とする前出の業界アナリストの予測とは正反対の見方だ。

翻って、当のインドでは、現地の人気ニュースサイト『ライブミント』が、「インドは、スズキがトヨタにシェアで優っている唯一の市場で、トヨタの現地法人はインドで4.6%のシェアしか持たない」と指摘。

その上で、「低価格の小型車が好まれるインド市場においてさえ、特に都市部においては、将来的に(トヨタが得意とする)ハイブリッド技術が求められるようになるのは明らかだ」と予測。「ハイブリッドは、今回のトヨタとスズキの提携の目玉になると、現地法人マルチ・スズキの高位の情報筋は述べている」と報じた。

一方でこの現地法人の情報筋は、「インドで求められるのは、日本で売れ筋の高価格ハイブリッド技術ではなく、その低価格版だ」と述べ、インドの消費者がトヨタとスズキの提携に期待するのが、高燃費でクリーン、しかも安い小型ハイブリッド車であると示唆した。

刻々と変化してゆくインド市場において、トヨタとスズキが小型車とハイブリッド技術という得意分野のノウハウを分かち合い、消費者の求めるクルマを送り出せるかに、今回の提携の成功のカギがある。

両社が力を合わせることができるなら、日本メーカーは急速に伸びるインド市場で地歩を固めることになるが、もし仲違いすれば、インド市場を虎視眈々と狙う米国・中国・韓国などの競争相手に、シェアを奪われるかもしれない。(在米ジャーナリスト 岩田太郎)

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