JR九州が来る10月25日、東証一部に上場する。多くの投資家が公募の抽選で同社の株を獲得しようと試みたようだが、意外と落選したという話が多く、上場前からその注目度の高さが話題となっているようだ。
ちなみに上場時の初値についてみれば大方の予想が2800円から3000円程度であったが、公募取得時の人気の高さから上場直前の今になってさらに上ぶれの予想も少しずつでてきているようだ。
さて初値以上に注目されているのが上場後の株価動向である。上場後1ヶ月程度は、インデックスファンドによる買い需要や公募で取得できなかった投資家の買いが続き、株価は安定推移することが予想されている。
ただその後、株価は他のJR各社との比較やJR九州自体の業績にかかわる事業展望を勘案した適正な株価水準へと収まっていくと予想される。そこで本記事では、上場時のJR各社との株価水準の比較とJR九州の今後の課題などを取り上げてみよう。
同業他社に比べてJR九州の割安度は?
IPOとして上場したばかりの時には、多方面からの需要により株価は適正な水準からは大きく掛け離れることが多々ある。
昨年の郵政3社の値動きにしても、元々業績自体は成長性の鈍いものと捉えられていたために、上場後のインデックス買いが終わるタイミングで高値をつけて株価が下落をし始めた。今では3社ともに公募の価格程度にまで落ち込んでしまっている。結局、企業の株価にとって最後にものを言うのは業績なのだ。
では、肝心のJR九州の業績はどうであろうか。まず上場時の業績に対して、株価がどの程度お得かどうかをその他のJR3社と比較してみよう。
比較にはお得度合いを考慮するうえでよく使用されるPERを使用する。ちなみにPERとは株価を1株あたり利益で割って求めた数値のことである(一般には低いほど割安とされているが業種により平均数値は異なるため、同業種のあいだで比較する必要がある)
現在出ているJR九州の17年3月期の1株利益233.8円に公開価格である2600円を当てはめて考えると、PERは10.88倍である。一方でJR各社の17年3月期の予想PERは以下の通りだ。
JR東日本 <9020> 13.13倍
JR東海 <9022> 9.65倍
JR西日本 <9021> 11.72倍
最初に提示したJR九州のPERは公開価格ベースでの試算であるが、これがもし上場後の株価上昇により一時的にも3000円を超える状態になる場合、PERは一気に12.56倍にまで上昇する。上場直後の予想としてはJR各社に比べてお得度は低いといえそうだ。
またJR九州はすでに株主優待(同業他社の優待と似たような内容)についても公開済みであるため、株主還元という意味合いでの投資家の買いは上場直後に織り込まれることになりそうだ。
上場後、インデックス買いが終わるタイミングからがJR九州の株価にとって正念場となりそうだが、JR九州には上場前から事業に関しては大きな問題がつきまとっている。