数々のマネーロンダリング疑惑の余韻からウェルス業務を縮小中の英大手金融機関HSBCホールディングスが、モナコから撤退する意向を明らかにした。

「信用回復に向け業務規模を縮小することで事件再発のリスクを最低限に抑える」というスチュワート・ガリバーCEOの判断で、かつて世界150カ国で展開していた事業が現在は3分の1に抑えられている。モナコ撤退によって、縮小計画は一旦完了となるようだ。

縮小はモナコで完了 心機一転再起を図る構え

過去数年間立て続けにマネーロンダリング関与のトラブルに巻きこまれてきたHSBC。最も記憶に新しい例では、昨年2月に発覚したスイスの子会社HSBCプライベートバンクの不祥事だろう。

元社員から流出した富裕層顧客情報のファイルがきっかけとなり、世界200カ国以上の富裕層顧客の脱税行為を手助けしていたとの疑惑が明るみにでた。スイス検察当局が捜査に乗りだすという事態に発展したが、和解金4500万ドル(約46億9800万円)で捜査打ちきりとなった。

米司法省からも「マネーロンダリング対策を怠った」として、同年4月に19億2000万ドル(約2004億4800万円)という史上最高額の制裁金を支払って訴追延期にとりつけたほか、2012年にはメキシコ監督当局にも制裁金2750万ドル(約28億7100万円)を支払っている。
またフランス、ベルギーといった他国でも税務関連の違法行為で追及されるなど、企業文化自体が不透明さのうえに築かれてしまったというイメージがぬぐえない。

ガリバーCEOは対応策として大幅な縮小に踏みきり、日本、パナマ、イスラエル、ブラジル、トルコなどのプライベートバンキングを売却、あるいは閉鎖してきたが、今回のモナコ撤退で一旦縮小計画を打ちきり「新たな戦略に専念する」構えだ。

これほどまでに世間を騒がせた今、並大抵の業務改善では地に落ちた信用を回復することは不可能だろう。ウェルスファーゴの口座不正開設スキャンダルなどを例にとっても、大手国際銀行に決定的な転換の時期が訪れているのは明白だ。これらの銀行が「法令順守」や「誠意」といった観念を、今度どこまで企業文化に浸透させることができるかに注目が集まっている。

モナコ部門の顧客はモナコの大手、CFM Indosuez Wealth Managementに引き継がれることで、交渉が成立している。(ZUU online 編集部)

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