最近、ストレスマネジメントに関心を持つ人が増えている。『嫌われる勇気』(岸見 一郎、古賀 史健、ダイヤモンド)や『置かれた場所で咲きなさい』(渡辺和子、幻冬舎)などの生き方・考え方を扱った本がベストセラーになったり、瞑想が注目されたりしているのもその表れだろう。こうした風潮は心理カウンセラーとして嬉しいし、ストレスを溜め込まず、日々を健康な心で過ごす人が増えて欲しいと思う。

とはいえ、ストレスを感じずに生活をすることは不可能である。特に、怒りやイラつきといった感情は、ストレスとなりやすい上に、瞬間的に感じるためコントロールが難しい。こういったものへの対処法として、すぐに使えて即効性の期待できる方法を紹介する。

怒りを吐き出す2つの方法

1つ目は、「紙に書き出す」である。部下が初歩的なミスを繰り返したり、上司に理不尽な指示を出されたりした時、頭ではどうすべきかわかっていても、心は冷静ではいられないだろう。そんな時、この方法はシンプルだが効果的。相手への、言いたくてもいえない罵詈雑言を、手元の紙に思う存分書きなぐるだけでいい。

本音を吐き出すことは、ストレス解消の基本だ。大声で叫ぶのが理想だが、そうはいかない環境では、書きなぐり法を使って欲しい。スマホのメモアプリでもいいが、ペンに力を込めて、紙に書き出す方が高いストレス解消効果があるので、ポケットサイズのメモ帳を用意するのがベストだろう。ただ、絶対に相手に知られてはならないので、メモの管理には十分注意して欲しい。

もう1つは、紙に書く余裕さえない時は「モノに八つ当たり」という方法だ。雑貨店にあるストレスリリーサーが最適だが、キャラクターのマスコット人形も良い。選ぶポイントは、イラっとくる相手を連想させるモノであることだ。デスクの下やポケットの中で、怒りを込めて思いっきり握れば、表情は笑顔でいられるはずだ。以前、会議中には、デスクの下でお手製の “手のひらちゃぶ台”をひっくり返すことで怒りを鎮めていた人がいたのだが、八つ当たりの達人と言えるだろう。

冷静さを取り戻す4つの方法

さらに冷静さを素早く取り戻すことで、イライラから脱出しストレスを断ち切る方法もいくつかある。最も簡単なのは「席を外す」ことだ。口実は何でも良いので、イライラしている状況から一旦離れ、冷静になってから戻れば、イラついてた状況にも落ち着いて対処できるようになる。

他にも、「時間軸を伸ばす」のも良い。その瞬間イラっときた出来事も、1日や1週間の中で見れば取るに足らない些細なこと、というケースは意外と多い。この、些細なことという感覚には、怒りを鎮め、落ち着きを取り戻させてくれる効果がある。

また、少し変わっているが、「怒りに名前をつける」という方法もある。名前は何でも良い。例えば、怒りに「だいちゃん」(私がよく呼ばれる名だ)と名付ける。そうしたら、頭の中で「だいちゃん、どうしてそんなイラついてるの?」と語りかけ、脳内でだいちゃんと対話するのだ。これは、ちょっとしたセルフカウンセリング効果が得られる。コツは“だいちゃんの言い分を否定せず、共感すること”だ。思いの外スッキリするし、何に怒りを感じていたのか頭の中を整理できるので、落ち着きを取り戻せるので、非常に効果が高い対処法となる。

もう1つ、「ご褒美」もシンプルだが良い方法だ。「この怒りを抑えたら、後で好きなスイーツを食べよう」といった具合に、怒りに勝てたら自分に簡単なご褒美を与えると決めるだけで良い。この瞬間、怒りはストレスではなく、自分を喜ばせるチャンスに変わるはずだ。

最後におススメの方法 頭の中で福笑い?

最後に、私が「脳内福笑い」と呼んで勧めている方法を紹介する。この方法は、上司の無意味な説教や聞き飽きた自慢話など、まともに聞く必要すら感じないが逃げられないケースで非常に有効である。

やり方は簡単だ。私たちは普段話を聞く際、自然と相手の言葉や声に意識を向けているが、それをやめ、視覚に集中し、相手の顔のパーツをイメージの中で自由に動かすだけ。目や鼻をやたらと大きくしたり、ちょびひげを加えたり、すべてはあなたの自由である。小学生の頃、教科書に出てくる偉人の肖像画や写真に落書きをしたことがあるだろう。その要領だ。

表面的に相づちはしながら、頭の中で福笑いに勤しんでいる自分を想像して欲しい。怒りを感じることなど不可能だろう。実行する際は、熱中すると笑ってしまう恐れがあることと、相手の話が頭に入らないことだけ気をつけて欲しい。

怒りはその場で対処しないと、対人トラブルを引き起こしたり、仕事の能率が下がったりと、自身に様々な悪影響を及ぼしかねない。今回紹介した方法は、大した道具も必要なく、どれも知っていればすぐに実践できるものばかりだ。自分に効きそうなものを選んで、今日から取り入れてみてはいかがだろうか。

藤田大介
DF心理相談所 代表心理カウンセラー この筆者の記事一覧

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