(本記事は、中根一氏の著書『世界基準のビジネスエリートが実践している 最強の体調管理』KADOKAWA、2018年11月8日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

エリートは入浴時に空気の流れを意識する

世界基準のビジネスエリートが実践している 最強の体調管理
(画像=baranq/Shutterstock.com)

老け込むようになると、新陳代謝が落ちて、気の流れが停滞するようになります。

若い時なら、真夏に半袖・短パンで過ごせたとしても、年を取るとともに、体温が低くなり汗をかきにくい身体になり、体温の調整が難しくなります。

加齢による気の流れの停滞の仕業と言えるでしょう。

気の流れの停滞を少なくする方法は、いくつかあります。

基本的には身体を温めることで、身体の中の気を巡らせることができるのです。

入浴で効果的に休息をするコツ

入浴は、簡単に気の停滞を流すいい方法です。浴室は、できれば、窓を閉めきった状態にはしないほうがいいと思います。

マンションなどでは、浴室に窓がついていないというところもあるかもしれません。

そういった場合は浴室の換気扇をつけて入浴するとか、浴室の扉を開けたままにして、さらに脱衣所の扉も開けて、空気の通りがあるようにしておくのがいいでしょう。

そうすることで、入浴しながら、身体の熱を放散させることができ、気の流れを作り出すことができるのです。

入浴の目的はただ一つ、気の流れを滞りなくするためです。

デトックス効果を期待してはいけません。最近の研究では、ホットヨガ、ジョギング、サウナといった汗をかく行為での物理的な毒素排出はゼロだということがわかってきました。

では入浴時のお湯の温度は、どのような設定がよいのでしょうか?

身体を温めようとして、熱々の温度で入浴する方もいらっしゃるでしょうが、おすすめは、とにかく「ぬるめ」の温度。

冷えの解消につながり、長時間、身体を温めてくれる効果があります。

もっと具体的に言うと、お風呂の温度が42度を超えると交感神経が刺激されるようになったり、肌の脂質も溶けはじめて、乾燥肌の原因となるので、体調管理のための入浴としてはおすすめできません。

お湯の温度は37度で、約20分の入浴がベストです。

人の肌には24度から37度の温度を感じ取るTRPV4というタンパク質があります。このTRPV4が活性化すると、潤い成分となるコラーゲンが生成されるようになります。

それによって、冬場の乾燥、肌状態が悪くなることを防ぐことができるようになるのです。

さらに、脳の海馬の働きも盛んになるということがわかっています。海馬には、新しい事柄を記憶したり、物の配置や地図を理解する働きがあります。

アルツハイマー病が発症すると、この海馬の働きが低下することがわかっています。

海馬はまたキャッチした情報の「要・不要」を判別し、「好き・嫌い」を判別している扁桃体とセットになって働いているので、海馬を元気にすれば物事へのモチベーションを上げることができます。

「ぬる湯バスタイム」で海馬が元気になる

大きなショックを受けると、恐怖感や無力感に襲われるPTSD(心的外傷後ストレス障害)という状態に陥ることが知られています。

これは大脳にある海馬が、ストレスによって分泌されるホルモンによって萎縮したことで起きることがわかっています。海馬の機能低下は、老化だけでなく慢性的なストレスによっても起きるのです。

上手にストレスを発散すると海馬が活性化するというのですから、できるだけネガティブな感情は溜め込まないようにして、身体だけでなく心の状態も、表情も前向きに若々しくしていきましょう。日常的に誰でもできる方法で、海馬を元気にすることが東洋医学では可能です。

そう、いつもの入浴を「ぬる湯バスタイム」に変えるだけなのです。仕事へのモチベーションも入浴の仕方を変えるだけで上げることができます。

私も、講義の準備や執筆に行き詰まってしまった時は、いつもよりもお風呂の温度を下げて長風呂をするように習慣づけています。

それまで、頭の中でしっくりこなかった起承転結が綺麗に整い、進まなかった筆がスルスルと進むようになりました。

ビジネスエリートの晩御飯はお風呂の後だった!

お風呂に入ってパジャマに着替えたら、あとは寝るだけ。忙しかった1日を締めくくるには、最高の展開です。

「1日の疲れは、ゆっくりお風呂で洗い流す」と想像するだけで、なんだかホッとしますね。

デスクワークから解放され、湯船で全身に水圧をかけながら身体を温めて、少し早めのテンポでスムーズに血液が流れる時間は、心身のリラックスには最適です。

これは、「眠る」ことにフォーカスを当てた場合のお話。

日常生活において、夕食後に入浴することが当たり前になっているのは、食後にお風呂に入り、湯上がりにゆっくりとお酒を飲んで就寝するシーンをテレビドラマなどで刷り込まれているからではないでしょうか?

元気な身体作りの基本は、快食・快便・快眠ですが、ここでは胃腸を元気に保ち、老け込みを防ぐために夕食前のお風呂を皆さんに提案したいと思います。

「入浴後に晩御飯を食べると、すぐ眠る時間になるから太っちゃうのでは?」という理由から、なかなか実践してくださる人が増えませんが、太る理由は、食事と睡眠のタイミングだけではありません。

日常でも温泉宿の入浴タイミングを実践する!

実は胃腸を健やかに働かせて消化吸収を効率よく行うためには、食後の入浴はNGなのです。

温泉旅館へ出向くと、まずは宿泊者カードに記帳をしてお茶を1杯。しばしの休憩を取ったら、まだ明るい時間から入浴をするでしょう。

誰かに温泉旅館での入浴方法を指南されたわけでもないのに、私たちはみんなそのように骨休めをすることを知っているのです。

体表面の血管が広がって血流がよくなると、内臓では血管が縮まって血流が悪くなります。

これを「ダストル・モラーの法則」と言います。食後すぐに入浴すると胃腸が消化吸収モードに入らず、摂取した食事を効率よく消化吸収できなくなってしまいます。

それが「入浴→夕食」という温泉スタイルをおすすめする理由です。入浴によって体表面の血流が増え、自然に湯冷めをしながら胃腸が活発に働く消化モードの準備が整ったところで、食事を取ることができます。

また、体温が一時的に上がった後に下がる過程を経ると、睡眠の質も上がります。

このように入浴と夕食の順序を変えてあげるだけで、身体に備わっている元気が復活するスイッチが入ります。

湯上がりの時間をゆっくり過ごし、40分〜1時間後に食事を取ると、胃腸も睡眠も最高の状態で迎えることができるのです。

世界基準のビジネスエリートが実践している 最強の体調管理
中根一(なかね・はじめ)
鍼灸師。「鍼灸Meridian烏丸」院長。京都在住。日本で最も古い鍼灸学術団体「経絡治療学会」の理事・関西支部長を務め、日本の東洋医学界を牽引。世界一流の政治家や経営者、俳優や音楽家だけでなく医師もクライアントに抱える。慢性疾患の治療だけでなく、疲労回復も得意とする現代人のお抱え鍼灸師として、執筆活動・ウェルネス事業アドバイザー・鍼灸学校における後進指導にあたっている。

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