(本記事は、中根一氏の著書『世界基準のビジネスエリートが実践している 最強の体調管理』KADOKAWA、2018年11月8日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

一流が「バランスチェア」を好む理由

世界基準のビジネスエリートが実践している 最強の体調管理
(画像=Dean Drobot/Shutterstock.com)

エリートに、猫背の方が少なく、美しい姿勢の方が多いのは、セロトニン分泌を促す身体を保っているから。

セロトニンには、自律神経を整える効果があり、ストレスや疲労の回復には欠かせないホルモンです。

猫背になりがちな姿勢を改善しセロトニンを出す道具として、ビジネスエリートの方たちは「バランスチェア」を活用しています。

1970年代後半に、ノルウェーのハンス・クリスチャン・メンショールが、まるで日本人が正座をしている時のように背筋を伸ばしたまま座ることができる椅子を3人の設計士とともに開発し、「balansR NIPPON」と名付けました。

その後、世界中で「バランスチェア」という愛称で親しまれています。

人間工学的にとても優れており、楽に着座ができて、猫背になりがちなデスクワークでも骨盤が立ち、姿勢を正してPC作業ができます。

普通の椅子も座り方を変えるだけでバランスチェアに

しかし、すぐにバランスチェアを買うことは難しい方もいらっしゃるでしょう。そこで、普段の椅子を「座り方を変える」だけで、バランスチェアのように座ることができる方法があるのでご紹介します。

一般的なオフィス用の椅子は、座面の幅が約33cmで、座面で体重を支える坐骨の平均的な幅は約13cm。左右の股関節の平均的な距離は男性で約38cm、女性で約41cmです。こうした椅子であれば坐骨で体重を支えたまま、椅子の座面の横に向かって足を広げることが可能です。

デスクチェアに足を大きく広げて座るこの姿勢では、膝が少し下がり、深く座った時と同じように骨盤が前傾しやすくはなりますが、そのおかげで背筋がスッと伸びて、猫背の姿勢を自然なポジションに変えることができます。

ただし、ずっと股関節を広げたままの姿勢でいると、お尻の上のほうにある中臀筋が緊張したままになってしまいます。

股関節に問題を抱えている人にはあまりおすすめできませんので注意してください。

道草しながら通勤すると休息できる

多忙なビジネスマンにとっては、「通勤時間が唯一身体を動かせるタイミング」というケースが多いと思います。

心身の疲労によって私たちから元気を奪っている原因の一つが「セロトニンの減少」。このセロトニンの90%を生み出しているのが小腸なのですが、このセロトニンを活性化させるために「20分間のリズム運動が最適」という研究結果があります。

「α2波」によるクールな覚醒状態で集中力と意欲が増す

リズム運動と言ってもダンスのような動きをするわけではありません。日常生活で行っている「歩行」「呼吸」「咀嚼」に代表される3つの反復運動なのです。興味深いことに、これらの運動を行うと大脳皮質が覚醒した時に発する「α2波」という脳波が観測されるのです。

この「α2波」が出ていると、緊張が緩和されてスッキリとした爽快感がある、クールな覚醒状態になります。同時に、集中力と意欲が増すというのですから、早速明日からリズム運動を始めたいものですね。

そこで患者さんにおすすめしているだけでなく私自身も行っており、おすすめしたいのが「道草通勤」です。

ギリギリまで布団の中で惰眠をむさぼることを止めて、今までよりも30分早く出勤してみましょう。そして少なくとも20分を、徒歩か自転車によるリズム運動の時間(通勤時間)に変えることで、朝からパフォーマンスを上げていきましょう。

通勤時間や移動時間に途中下車で歩いてみる

「いつも同じ通勤路」だと飽きてしまうので、ある時は近所の神社で手を合わせてみたり、ある時は遠回りして街路樹が生い茂る道を辿ってみたりと、色々な道草をしながらの通勤をしてみましょう。

そんなひと手間で通勤時間が休息時間に変化します。

「そんな、まさか」と言う前に、だまされたと思って手提げバッグをリュックに替えて道草をしてみてください。山手線の一区間平均は、1.2km。徒歩の平均時速は4kmですから、18分あれば歩ける計算になります。

私は東京へ出張に出かける時は、必ずリュックで出かけます。恵比寿駅から三田駅まで行くのに直線距離で歩いたら30分を切ります。電車に乗って移動すると約20分、実は歩いてもあまり時間は変わらないのです。

街を散歩してみると今まで気づかなかった発見もたくさんあって、心もリラックス、思わぬ結果につながるすごいアイデアが生まれる時間になるかもしれません。

良質な休息にウォーキングは必須

身体を健やかな状態にしておくための運動には、様々なものがありますが、私はウォーキングが基本と考えています。

歴史を振り返ってみても人の身体の最大の特徴は「二足歩行」に進化したこと。私たちの身体を活かす動きは歩行なのです。

質のよい休息を取るためには事前準備が必要。それが、ウォーキングなのです。

古典医学書には「動きっぱなしは、肝の働きが弱くなる」「立ちっぱなしは、腎の働きが弱くなる」と書かれています。では横になって休んでいればよいのかというと、「寝っぱなしだと、肺の働きが弱くなる」とも書かれています。

「肺は腎の母」という東洋医学の言葉の通り、ゆっくり休んで腎を補うためには、適度に肺を働かせておくことがポイント。ウォーキングは老け込まない身体作りの第一歩なのです。

世界基準のビジネスエリートが実践している 最強の体調管理
中根一(なかね・はじめ)
鍼灸師。「鍼灸Meridian烏丸」院長。京都在住。日本で最も古い鍼灸学術団体「経絡治療学会」の理事・関西支部長を務め、日本の東洋医学界を牽引。世界一流の政治家や経営者、俳優や音楽家だけでなく医師もクライアントに抱える。慢性疾患の治療だけでなく、疲労回復も得意とする現代人のお抱え鍼灸師として、執筆活動・ウェルネス事業アドバイザー・鍼灸学校における後進指導にあたっている。

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