国際的掃除機メーカー、ダイソンのジェームズ・ダイソン会長が1500万ポンド(約19億4296万円)を投じ、ダイソン工科大学(Dyson Institute of Technology)を設立する。一流の技術者育成に向け、南部ウィルトシャー州で来年秋に開校予定だ。

学費が無料というだけではなく、学びながら給与を得られる点が既存の工科大学と大きく異なる。深刻な自国の技術者不足に悩むUKを救済する、画期的試みとなりそうだ。

「働きながら学ぶ」がコンセプトのダイソン工科大学

英国における技術者不足の現状を、長年にわたりジョー・ジョンソン英大学・科学大臣に訴えかけてきたダイソン会長の熱意によって、ついに実現した新工科大学設立。イングランド中部、ウェスト・ミッドランズ州のコヴェントリー大学の協力を得て、来年秋に25人の生徒を受けいれることが決定している。

技術者不足は多数の先進国が直面している問題だ。UKでは2020年までに、ソフトウェア・ハードウェア・電子分野で新たに100万人の技術者を育成する必要があるとダイソン会長は見ている。しかしそれだけの大型人材育成を行うだけの環境は、残念ながら整っていない。

現在ダイソンは世界34カ国から技術者を雇いいれているが、多くのUK企業が中国、韓国、インドといった多数の技術者を創出している国の脅威にさらされているという。「UKの技術者不足は世間で認識されているよりはるかに深刻だ」と、ダイソン会長は自国の嘆かわしい現状を訴えかけている。

コヴェントリー大学のクマール・バタチャリア会長も「他国と競い合ううえで、適切な技術者の育成は不可欠だ」と、ダイソン工科大学との提携によってUKでの技術者育成に貢献する意向だ。

ダイソン工科大学は「働きながら学ぶ」がコンセプトだけに、生徒が実際の商品開発に携わりながら必要な技術を身につけていくことができる。メントル(講師)や開発スタッフとともに開発に参加し、生きた技術を学ぶと同時に資格と給与を得るというシステムで、より多くの若者の関心を集めると期待されている。

ダイソンは今後、ロボット工学や蓄電池技術を中心とした開発に力をいれていくそうだ。多くの先進国がある時期から発展途上国任せにしてきた技術者の育成。近年ではその波が発展途上国にも広がりつつあるという。

テクノロジーとともに時代だけが進歩をとげ、人間が取り残されてしまう。そんな暗然たる状況に、ダイソンの試みが一筋の希望の光を投げかけてくれると期待しよう。(ZUU online 編集部)

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