「まさか」の原因は、私たちの心の中にある
米大統領選挙で我々は相場の上昇、下落を経験した。そして、またしても「まさか」を経験することとなった。
なぜ、「まさか」を経験することになったのだろう。今回の大統領選では多くのマスコミはクリントン優勢を報じていた。日本からも多くの売れっ子キャスターが訪米し、レポートを届けている。
それらの多くは、ニューヨークやワシントンの有名スポットを背景にしたもので、米国の現状を掘り下げた力のこもった取材と言うよりも、観光案内の延長線上のようなものばかりだった。そして、我々もそれを是としたのも事実だ。ニューヨークの摩天楼やホワイトハウスをバックにレポートする映像に我々は紛れもない米国を感じ、それが米国であると何の疑いも抱かなかったのだ。そして、またしても「まさか」の事態に遭遇した。
丹念な取材を行い、トランプ優勢を主張していたジャーナリストがいたことも事実である。しかし、私をはじめ多くの人はトランプ優勢というレポートをどこか「非現実的なもの」と軽視していた。田舎町に足を運び丹念な取材を積み重ねる地味なレポートよりも、ステレオタイプの米国らしい映像を期待し、多数派の主張を疑うことなく受け入れたのだ。
なぜ、これほどのどんでん返しが起こったのか。なぜメディアは真実を伝えきれなかったのか。メディア自身が真実を伝えることを放棄してしまったのではないか。そして、我々はメディアが報じることを疑いもなく信じ、「自分で考えること」を放棄してしまったのではないか。
「まさか」の原因は、私たちの心の中にあるのだ。
「考えること」を放棄してはならない
Brexit も、トランプ大統領の誕生も決して偶然での出来事ではない。「まさか」の事実は我々の投資に対する姿勢に警鐘を鳴らしているのではないか。そう、投資とは自分の頭で「考えること」が基本なのだ。自分の心と「真摯に向き合う」ことが大切なのだ。そのことを忘れてはならない。
自分で考えることは楽しい。相場を通じ、投資を通じ、その楽しさをお客様に伝えること、それが我々銀行員の使命だ。(或る銀行員)
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