「信用創造」と呼ばれる手品のカラクリ

ちなみに、日本銀行が発行している「日本銀行券」の残高は、2015年末で98.4兆円(155.6億枚)です。一方、「家庭の金融資産残高」は1700兆円あります。

あれっ? ここで疑問を持たれた読者も多いかと思います。「日本銀行券」の残高と、「家庭の金融資産残高」があまりにもかけ離れていますね。なぜでしょうか?

家庭の金融資産残高には、株式や外貨などの資産も含まれているので「日本銀行券」の残高と違ってきます。でも、それだけが理由ではありません。

たとえば、Aさんが1000万円持っていて、銀行に1000万円預けました。銀行は、預かった1000万円のうちの900万円をBさんに貸しました。Bさんは、300万円を手元に残し、残りの600万円を銀行に預けました。さらに、銀行は預かった600万円のうち、500万円をCさんに貸します。

Aさん、Bさん、Cさんのお金を合計すると、Aさんの1000万円+Bさんの900万円+Cさんの500万円で、合計2400万円になります。元の1000万円が2400万円に増えました。まるで手品のようですね。

これを経済学では「信用創造」といいます。

このように、お金というのは実際に手でさわれる現金だけではありません。そもそも、お金には実体がなく「信用」で成り立っている側面が大きいのです。

もし、発行体である国や日本銀行の「信用」がなくなったら……そう考えると少し怖いですね。

長尾義弘(ながお・よしひろ)
NEO企画代表。ファイナンシャル・プランナー、AFP。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)『怖い保険と年金の話』(青春出版社)『商品名で明かす今いちばん得する保険選び』『お金に困らなくなる黄金の法則』(河出書房新社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)、『保険はこの5つから選びなさい』(河出書房新社発行)。監修には別冊宝島の年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。

【編集部のオススメ記事】
「信用経済」という新たな尺度 あなたの信用力はどれくらい?(PR)
資産2億円超の億り人が明かす「伸びない投資家」の特徴とは?
会社で「食事」を手間なく、おいしく出す方法(PR)
年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意(PR)