中長期的な注目点:EUの結束力

他国への影響として市場が懸念するのは、ナショナリズムの台頭である。図表11の通り、来月以降の欧州の選挙では、反EU・反移民の右派が勢力を伸ばしている。これらの選挙が、年末から来年に向けてのEUやユーロの存続に対する不透明要因となる。

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手始めは、12月4日のイタリアの国民投票である。投票自体は、議会制度の改正を問うものだが、現在のレンツィ首相が、改正が通らなかったら辞任すると表明している。国民投票の結果は政治的混乱の引き金になりかねない。

そのイタリアでは、現在、金融システムの修復が始まっている。10月、第3位のモンテパスキが、大規模なリストラ計画を提出したのに次いで、第1位のウニクレディトが、1.5兆円と巨額の増資を計画中と報じられた(図表12)。

しかし、未処理の不良債権額は資本との対比で依然大きく、担保となっている不動産も価格の下落が続いている。処理のためには増資が望ましいが、規模が大きいことから成否は不透明である。このような状況では、金融が経済成長を後押しすることは難しく、そうなれば、国民の不満も高まりやすい。

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仮に、イタリア国民投票が不調に終わり、政局が混乱すれば、来年3月のオランダの議会選挙にも影響が出うる。イタリア同様オランダでも、不動産価格の下落が続いており、金融システムへの影響が懸念される。

このように、第二、第三のEU離脱国が発生すれば、欧州システムには大打撃である。従って、欧州金融機関については、引き続き慎重にみるべきと考える。

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大槻 奈那(おおつき・なな)
マネックス証券 チーフ・アナリスト

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