米国第45代大統領に就任するトランプ氏。選挙期間中から度肝を抜くような公言をしてきたが、その中でも米国の歴史上、最も革命的な思考だと考えられる「Calexit」への動きに注目が集まっている。

そもそもCalexitとは何か

Calexitと聞いて「何か聞き覚えがあるような」と感じた人も多いだろう。Calexitは今年の6月末に英国で行われたEU離脱の是非を問う国民投票「Brexit」にちなんだ造語である。

トランプ氏がかかげるCalexitは、カリフォルニア州を米国から離脱させ、一つの国として独立させようというものである。そんな動きがにわかに進んでいるというのだが、いかにも米国らしい皮肉めいた造語に世界中の人々は興味を寄せている。

「英国はBrexitでインターナショナル・コミュニティから離脱をした。我々はCalexitによってインターナショナル・コミュニティの輪に飛び込んでいく」というものだ。

カリフォルニア州が米国からExitして、一国の主として世界に羽ばたくことはできるのであろうか?

あり得る?あり得ない?州の独立の可能性

米国での過去の歴史を振り返ってみると、「州の分離」については例がある。現在のメイン州はマサチューセッツ州に属するメイン地区であったが分離して独立、またウェストバージニア州は旧バージニア州から独立を果たしている。米国では現存する州の中から新しい州を作ることは、州議会で分離独立案が可決され承認が下りれば可能であるということだ。

過去、ニューヨーク市をニューヨーク州から分離離脱させようという提案、シカゴをイリノイ州から独立させようと提案もあった。米国は「Independence(独立)」文化が根付いており、それを称賛する声が圧倒的に高い国でもある。

話を戻すが、カリフォルニア州には「シリコンバレー」という巨大IT産業のプラットフォームや映画界の最高峰「ハリウッド」があり、2015年の経済成長率も実質4.1%と好調な伸びを見せた。州の人口はポーランド一国を追い抜き、州全体の経済規模はフランス一国を抜く世界第6位である。

カリフォルニア州の価値そのものが親国を追い越したのか、米国内に収まっていること自体が、さまざまな衝突を生むとした考えが浸透しつつある。

トランプ氏の勝利でゴングが鳴った「Yes! California's Calexit」。カリフォルニア州はもちろんお隣のオレゴン州までお祭り騒ぎは飛び火している状態だそうだ。2019年の春にはCalexitの国民投票も行われ、米国離脱が最良の選択になるのか結果が出るであろう。

キャンペーンの土台も「Good bye America」ではなく「Subsidize other states(他州を援助する)」というものだ。「カリフォルニア国」創設へ可能性は不透明であるが、2019年春に向けてスタートしたCalexitキャンペーンの動向には目が離せないことは確かである。

国連の承認が必要?国をつくるということ

「国をつくる」ということは一体どういうことなのだろうか?

一般的に新しい国を創設するには以下の3つの項目において国連が承認をしなければならない。別の言葉で示すなら、他国から認められなければ一国として成立には至らないということである。

1.主権 他国から干渉されず、国を平和に維持できる機能をもつこと
2.領土 一国に海や空を有すること
3.国民 一国に統治するべき住民がいること

よく分からない部分があるが、国としての細かい成立条件があり、それぞれ格付けをしていきながら審議を行うようだ。よく耳にする国家の「格上げ・格下げ」うんぬんである。

キプロスから独立した北キプロス・トルコ共和国は、まさに国連の承認待ちで宙ぶらりになってしまった国の代表的な例だ。独立を果たしたものの、世界から外れて孤立状態が続いていた。

しかし、今月8日のニュースでは、キプロスと北キプロス・トルコ共和国が再統合する動きが明確化され、最終段階の協議が7日行われた。こうやって、独立は果たしたものの、国連からのGoサインが出ないため、元のさやに戻る国も実際にある。

一方、領土がなくても国として認められた例もある。「マルタ騎士団」が良い例だ。「騎士団が国?」と思う方も多いと思うが、国連が認めた立派な国である。マルタ騎士団はエルサレムの聖ヨハネ病院独立騎士修道会で、現在世界100か国としっかり外交関係を結んでいる。

何より国連にオブザーバーとして参加している国連お墨付きの国でもある。もっとも、医療などの慈善活動を世界各国で行う国の力は計り知れず尊敬に等しいものがある。

そんな事例を含めると、カリフォルニアが独立国として国連に承認されるのも夢ではないのかもしれない。いや、夢で終わらせないようにするために、カリフォルニア州は独立に向けて全力疾走で走っていくのであろう。 (トリー・雪香、豪州在住のライター)

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