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(写真=PIXTA)

返還不要の奨学金制度の創設を求める声が強まっている。学業に専念できる奨学金を利用する学生は年々増え続け、奨学金制度は身近なものになった。その一方、制度の仕組みをきちんと理解していないことから起こる延滞もあるようだ。

安倍首相は今年夏の参議院選挙後の会見で、「未来への投資」をキーワードに挙げ、返還がいらなくなる給付型の奨学金について検討を進めていくことを明言した。「18歳、19歳の若者たちが一票を投じた」と今回の18歳選挙権導入の効果をアピールする発言だった。

増え続ける奨学金受給、厳しい学生の懐事情

奨学金制度は、学生生活の中で着実に根付いている。独立行政法人日本学生支援機構の「平成26年度学生生活調査」によると、大学生(昼間部)の51.3%が、奨学金を受けている。この受給者割合は、平成14(2002)年度の31.2%から年々増え続け、平成22(2010)年度に5割を超えた。

背景には、授業料の高止まりや親の年収の減少、それに伴う仕送り額の減少など、厳しい学生の懐事情がある。

同機構の奨学金制度は、無利息で貸与される第一種奨学金と、上限3%の利息がかかる第二奨学金があり、大学、短大、高等専門学校、専修学校(専門課程)、大学院に在学する学生・生徒を対象としている。

第二奨学金の場合を見ると、月額3万円、5万円、8万円、10万円、12万円から選択でき、奨学金を受けるためには本人の学力基準や親の収入限度額の条件がある。平成27(2015)年度に同機構の奨学金を利用した学生・生徒は130万人を超え、そのうち約3分の2が第二奨学金という。

卒業後も長期にわたる返還、延滞も

返還状況については、どうだろう。月額貸与額によって、当然返還総額と返還回数は違ってくる。月額3万円の第二奨学金の場合、156回(13年)だが、月額10万円だと、総額は480万円、返還回数は240回(20年)に及ぶ。卒業してからも長期間、返還していくことになる。

同機構の「平成26年度奨学金の返還者に関する属性調査結果」によると、平成26(2014)年11月末時点で、奨学金を3か月以上延滞している延滞者は約4.8%。その理由について聞いたところ、延滞が始まったきっかけは、「家計の収入が減った」と回答した人が69.4%とトップ。「家計の支出が増えた」という延滞者も41.9%と高かった。いずれも経済的な理由などで返還が後回しになったものと、見られている。

延滞が継続している理由については、「本人の低所得」と回答した人が、51.6%を占めた。今回から回答数の制限をなくしたため、複数回答となっているが、「奨学金の延滞額の増加」(46.8%)「親の経済困難」(40.6%)、「本人の借入金の返済」(26.0%)などが目立つ。

ただ返還の見通しについては、8割以上の人が決められた月額もしくは、より少ない額(半額より多く、半額程度、半額以下)ながらも「返還できると思う」と答えた。同機構によると、ここ20年間をみても延滞率に大きな変化はなく、きちんと返還している人が大半という。

奨学金申請は親がする?

気になる回答もいくつかある。この属性調査で奨学金の申請について、「本人が行った」と答えたのは無延滞者の場合、55.9%と半数を超える。一方、「親が行った」のは19.7%。

これに対し延滞者の場合、「本人が行った」と答えたのは33.6%。「親が行った」のは37.7%と、4割近くになる。親が申請を行った場合、本人は制度の内容を深く理解しないまま、奨学金を受け取っている可能性もある、という。卒業後の返還計画を家族で話し合うことなども必要だろう。

大学や民間団体などが運営する奨学金制度を使う学生も多い。私立大学の場合、給付型の奨学金制度が充実しているケースも多く、進学を考えている大学にそうした制度があるかどうか、事前に調べておきたい。

返還の必要のない「給付型」の奨学金は、民間の団体などでも最近増えている。学生が学業に専念できる環境を整備しようと、国でも検討が始まった。ただ、現在の給付型は、卒業後の就職を条件とし、特定の大学を指定するなど、様々の条件が課される。国の検討についてもこうした厳しい条件をどうするかは、はっきりしていない。

延滞防ぐ人生設計も

米国の大統領選では、学生ローンの負担が話題となり、もともと民主党支持だった若者の不満層が、トランプ次期大統領に票を投じたとする分析もある。米国の場合、学費は日本より高く、奨学金より利用しやすい学資ローンを選ぶ学生が多い。これは利息負担も大きく、事実上の借金だ。このため卒業後に返済に追われ、生活が立ち行かなくなる人も少なくない、という。

貸与型の奨学金の場合、無利子の奨学金の充実を求める声も多い。ようやく売り手市場になったという就職状況だが、非正規雇用の割合は増え続け、賃金上昇率も鈍いなど不透明な雇用情勢は続く。

社会人になってからは、結婚や転職などを経るごとにお金の使い方が変わる。学生の間は、将来の仕事の状況や収入なども想定しにくい。延滞を防ぐための人生設計も必要だろう。(ZUU online 編集部)

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