◆「見守り用機器」の利用意向は最も高いがプライバシー確保を懸念する声も
この項目の調査票の例示には、経済産業省の事業の「見守り支援(在宅介護型)」のイラストが例示されている(図表-8)。
全体では「利用したい」が77.7%、「利用したくない」が10.4%となっている。
年代別では「利用したい」が20~50代で75%を超え、中でも30~40代が80%超となっている。60代で「利用したい」が69.3%と他の世代より5~10%程度低くなっている(図表-9)。この60代の男女別集計によると、「使いたい」とする男性が68.7%、女性が70.2%で男女ほぼ同水準だが、若干ながら女性が男性を上回っている。
次に「利用を希望しない理由」の複数回答結果の上位2項目では、「プライバシーが確保されるのかが心配だから」が63.8%で突出して高く、次いで「価格が高そうだから」が16.2%と続いている(図表-10)。
<考察と補足>
本稿の4タイプのロボット介護機器の中で、「見守り用機器」における「利用したい」とする利用意向が約8割と最も高く、60代の男女別の「利用したい」とする割合もほぼ同水準であるが、女性が男性を若干ではあるが上回っている。
また、「利用したくない」とする理由は、「プライバシーが確保されるのかが心配だから」が63.8%と突出して高くなっている。それは回答者が「転倒検知センサー」が通常のビデオカメラの画像と思われている可能性があるのではないだろうか。しかし、ロボット介護機器の開発事業で実用化され販売が開始されている「見守り用機器」は施設向けの機器が大半であり、在宅介護向けの機器はまだ少ない。
また、施設向けに販売が開始されている機器を例にとると、その画像センサーは、対象者のプライバシーに配慮して明暗(シルエット)などで表示され、人やモノの輪郭のみが確認可能な画像であるため、プライバシーの確保についての懸念は少ない。また、通常のビデオ画像の「見守り用機器」を使用するとしても、個人情報保護等の観点から対象者や家族の同意を得ることが一般的でもあろう。
現在、在宅介護用の「見守り用機器」は幾つかの機器が登場はしているが、家屋内の環境(モノの配置など)が多様である上、開発要件でもある人の転倒を検知することが中々難しい。様々な新しい技術開発が進み、プライバシーの問題もない、安全・安心な在宅用の見守り機器開発を期待したい。
◆「コミュニケーションロボット」の利用意向は現状ではさほど高くない
この項目の調査票には、アザラシ型ロボットと施設でレクレーションの支援などを行なう小型の人型ロボットの画像が例示されている。前者(画像上段)は一般家庭及び福祉・介護施設で、後者(画像下段)は福祉・介護施設のレクレーションで数多く活用されている(図表-11)。
全体では「利用したい」が45.7%、「利用したくない」が32.8%となっている。また「わからない」も19.4%と4タイプの中では高くなっている。
年代別では「利用したい」が40~50代で50%弱と若干高く、60代では「使いたい」が45.2%で全体の45.7%と同水準になっている。(図表-12)。また、60代の男女別集計では「使いたい」とする男性が47.2%、女性が43.7%で、女性が男性より若干低くなっている。
「コミュニケーションロボット」の利用意向は他の3タイプの結果とは異なる傾向を示している。
次に「利用したくない」との回答者の「利用を希望しない理由」の複数回答結果の上位3項目では、「人で十分対応できると思うから」が46.0%、次いで「機器に介護されるのは嫌だから(家族が嫌がると思うから)」が36.7%、「価格が高そうだから」が15.7%となっている(図表-13)。
<考察と補足>
近年、人型の多目的コミュニケーションロボット、例えば「pepper」など、クラウドを活用した大小様々な「コミュニケーションロボット」も数多く登場を開始している。
さて、前述の「ロボット介護機器開発・導入促進事業(3)」の開発支援事業の「重点分野(5分野8項目)」にコミュニケーションロボットの分野は無く、近年の技術革新により注目されるようになったようだ。このため、調査票の「コミュニケーションロボット」の設問には、図表-1の解説と、前述した福祉・介護分野で販売実績を持つ代表的な2機種の画像が示されているようだ。
この「コミュニケーションロボット」の利用意向については、少し深い検討が必要である。この背景には(1)活用目的が他の3タイプの機器のように明確でない点、(2)調査票に例示された2機種の現物に触れた経験がない限り、それらの心理的な「癒し」などの効果を実感し、理解することは困難であることなど、様々な要因が利用意向に反映していると思われる。
つまり情報の不足や直に接した経験がないことなどによる理解不足や情報不足が大きく集計結果に反映されたのではないかと筆者は推察している。今後、用途開発や技術革新が進むなか、様々なコミュニケーションロボットが登場することにより認知度も上がり、利用意向も変化してこよう。
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(3)同事業は、3年度目の2015年度より経済産業省が国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)に委託して実施されている。その事業には「重点分野(5分野8項目)」のロボット介護機器の「開発支援事業」と、開発における様々な基準を策定する「基準策定・評価事業」の2事業がある。
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