大阪
(写真=PIXTA)

大阪市の吉村洋文市長は、市を残したまま行政区の権限を強化する「総合区」について、具体的な制度案を2017年8月ごろまでにまとめる考えを示した。総合区は市だけでなく、市を再編して特別区にする大阪維新の会の大阪都構想の対案として公明党も提唱している。

大阪維新の会政調会長も務める吉村市長は都構想の制度設計も並行して進める方針。総合区を先行して導入したうえで、特別区の賛否を住民投票で問う考えとみられる。大阪維新の会と公明党は総合区導入までの方向が一致しており、総合区導入による大幅な合区が進みそうな状況となってきた。

総合区は市を残したまま区の権限を強化

総合区は4月施行の改正地方自治法で導入が可能になった新しい制度で、まだ導入した市はない。東京23区の特別区や、大阪市、横浜市など政令指定都市の行政区とは、区長の権限や選任の仕方が大きく異なる。

政令市の行政区は独立した地方自治体ではなく、市の内部組織になる。一般職の区長は市長から任命され、果たすべき職責も市長から与えられた裁量の範囲内にとどまる。区議会がなく、区は条例の制定権や課税権も持たない。

一方、東京23区は市に準じる地方自治体と規定されている。本来、市町村が持つ権限のうち、消防や固定資産税の徴収など都に残されたものもあるが、独自の議会、条例の制定権、課税権を持つ。区長は市町村長と同様に選挙で選ばれている。

これに対し、総合区は市を残したまま、区の権限を強化して独自の施策をしやすくしているのが特徴。区長は特別職となり、市議会の同意を得て市長から任命される。区長を住民投票の結果などを基に決める「準公選制」も導入が可能だ。

形の上だと市の内部組織にとどまるが、区長は自ら行政事務を執行できるほか、職員の任命権や市に予算を提案する権限を持つ。総合区の設置は市の条例制定だけででき、国の同意を必要としない。政令指定都市の全域、一部を問わず、設置が可能なのも特色といえる。

市は3案5パターンの素案を市民に提示

吉村市長は11月末の市議会本会議で土岐恭生氏(公明)の一般質問に答え、合区を前提とした区割り案を2016年度中に示したうえ、全体像を2017年8月ごろまでにまとめる考えを明らかにした。

市は総合区の素案に対する意見を市民から募っており、早ければ2017年2月に1案に絞り込む。吉村市長はどの区を合区するかについて「区の数が決まってから検討する」と述べた。

大阪維新の会は2015年5月の住民投票で大阪市を廃止し、5つの特別区に再編する都構想案が否決された。しかし、半年後の大阪府知事、大阪市長ダブル選挙で圧勝したのを受け、都構想への再挑戦を目指している。

これに対し、公明党は市を廃止せず、区の権限を強化する総合区導入を提唱している。公表はしていないが、現在の24区を最大10区に再編する複数の合区案を独自にまとめ、支持母体の関西創価学会などに説明しているもようだ。自民党も合区なしに現在の24区をそのまま総合区とする案を提唱している。

市は8月から市内各地で住民説明会を開き、市役所本庁から移管する権限の度合いと合区数に応じた3案5パターンの素案を提示している。

最も権限移管が少ないA案だと、道路や公園の維持管理など一部だけが区に移る。B案では一般市並みに民間保育所の設置を認可できるようにし、C案だと中核市並みに老人保健施設や児童相談所を運営できるようにする。

此花区で開かれた説明会では、「合区で区役所が遠くなる」とする市民の不安に対し、吉村市長は「現在の区役所を総合区の支所として残すこともできる」と説明した。

総合区先行導入で公明党と連携へ

総合区導入には市議会の過半数の賛成が必要になる。定数86の市議会で大阪維新の会は36議席しかないが、19議席を持つ公明党と連携すれば、過半数を占める。市の最終案に公明党の意向を採り入れれば、導入に障害がなくなるとみられている。

公明党は都構想について2015年の住民投票で決着がついたとの姿勢を崩しておらず、今後議論がもつれる可能性も残るが、府立公衆衛生研究所と市立環境科学研究所の統合など二重行政の解消で大阪維新の会と蜜月関係に入っている。

吉村市長は都構想について、2018年秋の住民投票であらためて問う考えを示してきた。11月末の記者会見では、総合区案の先行議決を「決めてはいないが、有力なやり方だ」と否定しなかった。可決しても制度のスタートには一定の準備期間が必要になる。その間に住民投票を実施すれば、「市民にどちらの案が良いか、判断を仰ぐことができる」と述べた。

都構想の実現に必要な法定協議会の設置議案は、2017年2月に市議会に提出される見込み。吉村市長は公明党が掲げる総合区を市議会で可決したうえ、2018年秋の住民投票で特別区移行の是非を問い、否決されれば総合区を実施する意向とみられる。特別区にしろ、総合区にしろ、合区が実現すれば1989年から続く大阪市24区の形が大きく変わる。


高田泰 政治ジャーナリスト
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関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

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