今年10月に起こった電通新入社員の過労自殺は、同様の問題が社会現象化している米国やドイツでも論争を起こしている。
両国を含む多数の国で、過労死・過労自殺防止策となる法律や労働環境が確立しておらず、現状としては有給休暇の未消化も非常に多い。長時間労働・ストレス・ワーク・ライフ・バランスの崩壊などに焦点を当てた、施行可能な改善策が求められている。
独経済「過労による年間損失額は最高1兆円」
「十分に休まないといい仕事ができない」という考えが定着している欧州とは異なり、以前から「働き過ぎが当たり前」の風潮が強い米やアジア。
米国では週40時間労働制が一般的だが、実際には50時間、60時間働いている労働者も珍しくない。米アリゾナ州立大学、独ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ大学フランクフルト・アム・マイン、加マックマスター大学の経済学者が8月に発表した共同レポートからも、「米国の平均労働時間は欧州より25%長い」ことなど、多くの国の労働者が精神・肉体ともに疲労困憊していることがわかっている。
欧州国の中では珍しく、過労が根づいているドイツ。独大手保険会社、AOKの統計では、2010年の病気欠勤の9割が過労による精神疾患によるものだった。2004年から9倍に膨れあがっており、フランス通信社には「過労が原因の病気欠勤や早期退職が独経済にもたらす損失額は、80億から100億ユーロ(約9797億7208万円から1兆2247億円)」と報じられた。
こうした事実を受け、2012年には独労働省が中小企業を対象に、過労死・過労自殺防止策キャンペーンを打ちだしているものの、有給休暇制度が世界一整っているといわれるフランスや英国と比較すると、まだまだ「休みにくい」環境のようだ。
中国、韓国など、日本以外のアジア地域でも過労死は問題視され、各国の政府もゆっくりと動きを見せている。しかし決定打となるほどの強力な解決策は見られず、米人権NGO、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、「問題は法律の存在そのものではなく、法律が施行されているかどうかだ」とコメントしている。
税制、労働者の権利、文化などが、各国の労働環境の差を生みだしていることはいうまでもない。「多くの欧州国で導入されている高税率制度が、長時間労働の防止策となると同時に、労働者に寛大な福利厚生制度を築く基盤となっている」と指摘する声も多い。(ZUU online 編集部)
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