ニトリ,首都圏出店
(画像=Webサイトより)

これまで郊外の大型店舗を中心に展開し、家具小売り大手に成長したニトリホールディングス <9843> が、このところ首都圏で怒涛の出店攻勢を繰り広げている。2016年12月には、新宿駅南口のタカシマヤタイムズスクエアに新店舗をオープン。

これまでニトリを利用したことがなかった都市部で働く20‐30代の女性を中心に店内は賑わいをみせる。ニトリは今後も首都圏での出店計画を明らかにしているが、これまで培ったノウハウで商機を拡大することができるだろうか。

クルマを持たない顧客を取り込む狙い

ニトリの首都圏への勝負は15年4月、百貨店初進出となったプランタン銀座を皮切りに、16年には中目黒駅前、上野マルイ店と続いた。今回のタカシマヤタイムズスクエア店に続き、17年には池袋東武店の出店も控えている。

東京都内では、これまでも全国で最も多い店舗を運営してきた。東京23区内では、大田大鳥居店、南砂店、成増店、小岩環七店を構えていたが、いずれも主要な交通機関の駅から徒歩10分以上かかる場所に点在。買い物帰りに荷物を抱えて歩くのは困難で、クルマを持たない顧客を取りこぼしていた。日本自動車工業会の乗用車市場動向調査(2015年度)によると、乗用車の世帯保有率は、地方圏が86.6%に対し、首都圏は69.3%、23区に限ると47.7%となり、車を持つ世帯が半分以下に過ぎない。ニトリが取り込めていなかったクルマを持たない世帯層は23区内では相当数に上る。

国内で400店舗を達成し、地方の郊外店は飽和状態になる中、目を付けたのが首都圏での店舗展開だ。折しも都心の一等地にある百貨店やショッピングセンターは、売上不振からテナントが撤退したり、売り場面積を縮小したりするなど苦境に立たされている。そこに目をつけたニトリは、こうした好立地の店舗を確保していった。

タカシマヤタイムズスクエアの店舗は、16年7月まで1-6階まで紀伊国屋書店が店舗を構えていたが、売上の落ち込みなどから事実上撤退を表明し、1-5階をニトリに明け渡した。迎える側の百貨店も、若い客層の百貨店離れに歯止めがかからず、売上が伸び悩む中、ニトリの出店が起爆剤となることを期待する。ニトリは高島屋港南台店にも出店するなど蜜月ぶりだ。

女性客をターゲットにおしゃれな店舗

ニトリといえば、豊富な商品ラインアップに加え、シンプルなデザインを揃え、リーズナブルな価格で客を引き付ける。

郊外の大型店舗では、ファミリー層を中心とした客層をターゲットに、品揃えを充実させて陳列するレイアウトだが、都心の店舗では異なる戦略で挑む。首都圏への試金石となったプランタン銀座の売り場面積は約450坪で、ニトリ店舗の中では最小の売り場面積。

限られたスペース、銀座という商業圏を考慮し、展示・販売する商品を絞り込み、中価格帯の商品を中心に構成する。20‐30代の女性をターゲットに、商品の色や柄もトレンドを取り入れたものを配置し、コーディネートを提案する空間として、シーズンごとに異なるソファやカーテンを提案。おしゃれなインテリア空間を演出して、新たなニトリの一面を見せる。

タカシマヤタイムズスクエア店は、洗練されたデザインの雑貨類を充実させた一方、新宿駅という立地から、幅広い世代が帰宅途中に来店すること見込み、低価格帯の日用品やバス・トイレ用品の品ぞろえも厚くしている。

さらに、こうした都心店舗の需要にマッチするよう、商品ブランド戦略にも取り組み、価格帯別にブランドを作る。17年秋には、品質やデザインにこだわったオリジナルブランド「&Style」をスタートさせる予定で、洗練された商品で豊かなライフスタイルを提案する狙いだ。

好調な業績 節約志向も味方か

ニトリの都心への新たな挑戦を支えるのは、好調な業績だ。2016年2月期決算では、29期連続で増収増益を達成し、17年2月期では、さらにその記録を伸ばすことを見込んでいる。消費者の節約志向が広まるなか、リーズナブルな価格で商品を提供するニトリには、こうした消費者マインドは追い風となる。

また、これまで取り込めていなかった、郊外店舗に足を運べなかった客層を、都心店への出店により囲い込むことで、新たな顧客の開拓にまい進することができる。さらに、百貨店などの商業施設の不振は、テナントの撤退を引き起こし、暗雲が立ち込めるが、ニトリにとっては一等地に店舗スペースを確保できる千載一遇のチャンスとなりうる。

この商機をつかむには、郊外のファミリー向けの家具チェーンから、洗練された都心のショップとして、ブランドの新たな一面を確立できるか。ニトリの拡大路線への勝負が続く。(ZUU online 編集部)

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