(画像=プレスリリースより)
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東日本大震災の被災地である福島県内で、大型のメガソーラー(大規模太陽光発電所)建設が相次いでいる。東京電力福島第一原子力発電所の事故で広大な耕作放棄地が広がった南相馬市などでは、一般家庭ざっと4万世帯以上の消費電力をまかなえる5つの巨大施設が、ここ1、2年のうちに相次いで運転を始める。

福島県は2018年度に県内で必要なエネルギー量の30%を再生可能エネルギーでまかなう計画だが、ほぼ達成できそうな状況。震災で生まれた耕作放棄地が今、再生可能エネルギーの拠点に生まれ変わろうとしている。

収益を住民の帰町や生活支援に

南相馬市では、右田、海老、真野地区で県内最大級のメガソーラー開発プロジェクトが動きだした。住友商事 <8053> 、みずほ銀行、東芝 <6502> 、大成建設 <1801> の大手4社が220億円かけて建設する。

発電事業者は、住友商事と住友商事東北が出資した特定目的会社の「ソーラーパワー南相馬・鹿島」。既に着工しており、2018年3月に売電を始めたい考え。みずほ銀行を幹事行とする金融機関団が融資する。

敷地面積約110ヘクタールで、出力は約60メガワット。稼働後の年間発電量は一般家庭2万世帯以上の消費電力に相当するという。固定価格買取制度を使い、小売り電気事業者に販売する。

南相馬市は2020年で市内消費電力の3分の2、2030年でほぼ100%を再生可能エネルギーでまかなう目標を掲げている。南相馬市新エネルギー推進課は「メガソーラーのほか、風力発電の計画もある。目標達成に向け、再生可能エネルギー発電施設の誘致を今後も進めたい」と意欲を見せた。

福島第一原発事故の避難指示が解除された楢葉町でも、メガソーラーの建設が今春から続いている。出力11.5メガワットの「波倉メガソーラー発電所」で、2017年10月の売電開始を目指している。

福島第二原発に近い波倉、営団両地区の土地約25ヘクタールを地権者から賃借し、5万枚以上の太陽光パネルを設置する。年間発電量は一般家庭約3800世帯分に相当する。

総事業費は45億円。町が事業主体の特定目的会社の「楢葉新電力合同会社」に間接的に資金提供し、収益を住民の帰町や生活再建支援に充てる。発電で得た利益を地域内で循環する先進的な取り組みだ。

富岡町では3カ所で着工、住民出資の発電所も

福島第一原発事故で全町避難が続く富岡町では今年、3カ所でメガソーラーの起工式があった。大石原、下千里地区では、「富岡復興メガソーラーSAKURA」が7月に着工した。出力は30メガワット。町は一般家庭約6000世帯分の年間発電量を見込んでいる。

町やJR東日本エネルギー開発などが設立した「富岡復興エナジー」が発電事業者になる。収入の一部は県再生可能エネルギー復興推進協議会を通じ、被災地の復興に充てる。

上手岡地区では9月、「富岡杉内太陽光発電所」の建設が始まった。芙蓉総合リース <8424> 、シャープ <6753> 、グリーンファイナンス推進機構が出資した特別目的会社の「富岡杉内ソーラー」が運営する。

出力は約25メガワット。町の試算で年間発電量は一般家庭約5500世帯分に相当する。2018年3月の運転開始を目指しており、売電益の一部を県や町に寄付し、復興に役立てる計画だ。

高津戸地区では、地域主導で進めるメガソーラーの起工式が11月末にあった。特定目的会社の「さくらソーラー」が運営するもので、出力約33メガワットで、町によると年間発電量は一般家庭8000世帯分。2018年3月に完成する予定。

事業用地は農業振興地域内の農用地だが、原発事故による汚染で農地として使えない状況が続いている。この土地を太陽光発電に活用し、収益を住民の生活支援に充てる。総事業費は92億円。さくらソーラーには住民が間接的に出資、支援している。

富岡町産業振興課は「地域の農地再生と住民生活の支援のために計画した。3施設とも売電益を被災地支援に活用してくれることになっている。これを生かして1日も早く地域の再生を進めたい」と期待している。

耕作放棄地活用が復興の追い風に

福島県は3月、「再生可能エネルギー先駆けの地アクションプラン第2期」をまとめ、県内で必要なエネルギーのうち、再生可能エネルギーで発電する割合を2018年度で30%、2020年度で40%、2030年度で60%、2040年ごろに100%にする計画を打ち出している。

県エネルギー課の集計によると、2015年度末現在で稼働中の発電施設は、太陽光764メガワット、風力169メガワット、小水力16メガワット、地熱65メガワット、バイオマス179メガワットの計1193メガワット。県内で必要な全エネルギーの27.3%を占めている。

県はさらに再生可能エネルギーによる発電量を増やすことにしており、浮体式洋上風力発電実証事業や再生可能エネルギー産業の集積も進める計画。被災地で建設が進むメガソーラーは目標達成へ大きな弾みとなる。

特に福島第一原発周辺には広大な耕作放棄地が広がり、農地として利用できないまま放置されている。これらを発電施設として生まれ変わらせることができれば、復興に向けて大きな一歩を踏み出すことになる。

福島県エネルギー課は「メガソーラーを中心に再生可能エネルギーの導入目標を達成し、新しい福島を築いていきたい」と語った。

高田泰 政治ジャーナリスト この筆者の 記事一覧
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

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