income tax

今回、安部政権が検討している新しい税制改革は、アジアで活動する投資企業や金融業界を日本へ呼び込み経済を活性化させる目的として個人に課税される所得税の最高納税額の上限を2億円にするといったものがあります。 この新税制案は早ければ平成27年度税制改正大網に盛り込む方針です。 はたしてこの新税制改革、富裕層が有利になるのでしょうか?そのメリットとデメリットとはどんなものがあげられるでしょうか。


①新税制の上限

今日本で行われている所得税の計算方法は累進課税という所得が多くなればその分打ち出される税金も多くなるという仕組みのものですが、その税率は最高で40%であり、納税額に対しての上限は設けられていません。 もし所得が100億あったとしたらそれにかかる税金は単純に考えると40億支払うことになります。

今回の新税制により、上限が2億円に設定されれば、そういった富裕層と言われる高額所得者にとっては大きな優遇を受けられるというメリットが生まれます。 今回の安部政権が打ち出した新しい政策は富裕層の為の税金優遇策と言えます。


②海外からも移住してくる富裕層

実際この新税制の改革で、本当に海外の富裕層が日本に移住してくるのでしょうか。 この所得税の納税額に上限を設ける本来の狙いは、アジア拠点で活動する投資家や金融などの富裕層を呼び込むという目的があるようですが、そのことを踏まえて納税額の上限を設定するメリットとして二つあげられます。 メリットとしてあげられる一つ目は、アジア拠点に住んで活動している富裕層が日本に移り住むことになることで、その分の所得税を国庫に入れることができるので納税額が増えるということ。

もう一つは、移り住んできた富裕層たちが日本で消費を行うため、日本経済の活性化につながるということがあげられます。 こういったメリットを見越しての税制改革と言えるでしょう。 また、デメリットとしてあげられるのは政府が希望している通りにアジアに住む富裕層が日本に移住をしなかった場合、たんに元々日本で住み活動をしている所得税の納税額が2億円を超える人たちだけが優遇されてしまうということになり、結果として納税される額が減るということです。 ですから本当にこの新税制を行った場合に、現在のアジアの税制のメリットが大きいシンガポールや香港で活動している富裕層たちが、思惑通りに日本に移住するのかどうかが鍵となります。


③海外へ移り住む富裕層

政府が狙っているシンガポールや香港などに住んで活動している超富裕層にとって、新しく所得税の納税額の上限が2億円になった日本に移り住んでくることが魅力的な話なのかどうか考えた場合、実際そうでもないとも言えます。 現在のシンガポールの最高税率は、32万シンガポールドル超の20%という率が出ています。これを日本円でいうと、約二千四百万円超の場合に20%ということで、日本の最高税率は、一千八百万円超の40%なのです。 この最高税率を用いて計算した時に、納税する金額が2億円を超えるのはシンガポールで10億円以上の所得を出している人ということになります。 ですから日本の所得税の納税額の上限が2億円になった時に、メリットを感じることができる人は本当に一部の超富裕層だけということになるのです。

さらにシンガポールでは、投資所得については非課税という税制をとっているため、世界の富裕層がシンガポールに移住するというインセンティブが働いているのが現状なのです。 今回打ち出された新税制改革のように、所得税の納税額の上限を2億円に設けたところで、、世界の富裕層を日本に呼び込み移住してもらえる効果というのが得られる可能性は低いと考えられます。 そうなったときに、デメリットのほうが全面にでてさらに国庫に納まる納税額は減少するということになります。


メリットよりもデメリットのほうが全面に出る可能性が高い

東京は治安もよく、世界の料理が堪能できたり娯楽施設や様々なイベントを開催していますし、医療水準も高いと言えます。 そういったところから元々投資企業や金融などには人気が高いですから、ビジネス展開する富裕層が快適な生活をおくることができる環境を整えることで、アジア拠点の富裕層を日本へ移住させ金融ビジネスを活性化に合わせて日本市場へ投資を拡大させることが狙いです。

しかし結局政府が打ち出した今回の納税2億円案の対象となる人は単純に計算すれば5億円以上の収入がある人のみが適用されるため、そのような超富裕層は海外でもごく一部であり、日本に税優遇を受けるために移住してくるとは考えにくいのです。 現在日本に既に住んでいる富裕層を見た時は数億円の報酬を得ている人はほんのわずかな人なので広範囲は優遇にはならないとしても海外から移住が行われなかった場合、日本の超富裕層が得をするだけで終わってしまう可能性のほうが高いと言えます。

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