自動運転,パナソニック,ZMP
(写真=PIXTA)

「究極のクルマ」とも呼ばれる自動運転車市場に、自動車メーカーだけでなく、IT企業が積極的に参入している。そんな中、大手電機メーカーのパナソニック <6752> が2017年春に、自社製の小型自動運転車の走行実験を始めるという。

世界中で注目を集める自動運転車市場

自動運転車は画像処理技術や人工知能技術を駆使することで、システムが自らの判断のもと、搭乗者を目的地まで運んでくれる。技術レベルが自動運転レベル0からレベル4の5段階に設定されており、レベル4にもなると完全自律走行ができる。

ボストンコンサルティンググループによれば、2025年までに全世界で1450万台が販売されると予想している。日本では2030年時点ではレベル3が1050万台、レベル4が56万台も市場に出回ると富士キメラ総研が予想している。

こうした市場規模は7兆円ともいわれ、自動車メーカーだけでなく米グーグルやソフトバンクなどの異業種も参入を始めた。特に自動運転には欠かせない人口知能技術に強みを持ったIT企業が参入に積極的な姿勢を見せている。

今まさにもっとも勢いを見せている市場の一つと言えるだろう。

パナソニックは自社製自動運転車で参入

多数の企業が市場にこぞって参入する中、日本の大手電機メーカーのパナソニックも参入をしだした。同社では2020年に限定エリア内の完全自動運転(レベル3)の超小型電気自動車を販売する予定だ。

パナソニックでは、すでに同社のテストコースにて試験走行を始めている。加えて本社・西門真地区でも試験を開始して、その安全性などを実証していくようだ。来年2017年春には公道での走行試験も始める予定である。この試験に成功すれば自動車メーカー等からの自動運転車の設計や請け負いも検討していると言う。

国内では2016年11月9日に国会周辺にてトヨタ、日産、ホンダの3社が公道実験を行ったばかりだ。ただテストコースと公道では、その意義は全く異なる。パナソニックは半歩遅れる形になっているが、技術面・戦略面でカバーできる点もあるだろう。

パナソニックが特に重視している技術は、時速40km程度の中低速域における前方や側面、後方検知技術だ。道路環境に左右されずに安全に運転できることを重視している。時間帯や天候等にも影響を受けにくい検知技術を開発し、中低速域での事故をなくすことを念頭に製品化を目指しているのだ。

パナソニックはBtoB展開の1つとして位置付け

パナソニックの自社製自動運転車はBtoB展開の1つとして位置付けられるだろう。同社は2013年に大きな事業戦略の舵きりを取った。それがBtoB事業へのシフト転換である。

今までパナソニックはBtoC事業を中心に成長を遂げてきたが、現CEOの津賀社長が思い切った決断をした。車載事業で2兆円、住宅関連事業で2兆円と高い目標を掲げたのだ。その延長線上に自社製自動運転車があるのだろう。

現在でこそ、パナソニックの成果は芳しくないが、自動運転車事業が成功すればそれを返上できる。特に同社が注目しているのは、スマートタウンや商業施設敷地内での活用だ。この領域であれば自動車メーカーとの競合を避けられると考えているようだ。

この狙いに対して有識者は賛否両論である。「ビジネスチャンスとしては有効」「期待できる」とする意見もあれば、「短距離での移動手段は他にもある」「競合は多い」とする意見も見られる。

ZMPは上場手続き延期したばかり

こうした意見の中で注意したいことは、この領域は他業種も狙っている点であろう。短距離になれば別の移動手段が競合になる可能性も考えられる。そのような中で確実にニーズに答えて、販売数を伸ばしていくことは困難を要するかもしれない。

一度、自社開発を決めた以上は、成功すれば手に入れるものが大きいが、失敗すれば失うものも大きい。なんとしても成功してBtoB分野における存在感を増しておきたいものだ。

自動運転車はまだまだ市場が熟していないからこそ、単純な予想はできないだろう。自社でやるからには失敗は許されない中、パナソニックがどのようにビジネス展開をしていくのかは気になる点だといえる。

こうした社会の動きはIT、人口知能が進化したおかげといっても過言ではない。「自動車産業は大変だ」と対岸の火事を見ているのではなく、この現象をチャンスととらえて、明日のビジネスに役立ててもらいたい。

ただ一方で、この分野で有望と見られているZMPは東証マザーズへの上場を予定していたが、顧客情報の流出が発覚したことを受けて、上場手続きの延期を発表したばかり。情報セキュリティー体制を再構築して手続きを再開するとしており、自動運転車市場の可能性に疑義をもたらすものではないが、一つ注意しておきたいニュースといえそうだ。(吉田昌弘、フリーライター)

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