12月5日、英リヴァプール・ジョン・ムーアズ大学で講演を行ったイングランド中央銀行(BoE)のマーク・カーニー総裁は、「グローバリゼーション(経済の国際化)が、低所得、雇用の不安定性、巨大化した多国籍企業による多額の税金逃れなどの根本的原因」であると指摘した。

中央銀行の総裁がグローバリゼーションの効果を否定し、政府に軌道修正を要請することは異例であるだけに、英政府による今後の対応が注目される。

カーニー総裁「ゆがんだグローバリゼーションを修復するのは政府の役目」

今年8月に実施した追加利下げに対し、英政府側から「緩和政策は所得格差をさらに広げる」と痛烈な批判を受けていたBoE。カーニー総裁は「所得格差と金融政策は関連性がない」と政治の経済介入を強硬に撥ねつけていた。

ムーアズ大学の講演では自らの反論に一歩踏みこみ、「2008年の金融危機の際、多数の大手銀行が責任逃れに走り、そのツケを一般市民が強制的に払わされた」と発言。グローバリゼーションがゆがんだ形で実施され、現在深刻化している経済問題を引き起こしたと見ている。

また英国の所得格差の背後には、若い世代と高齢世代の著しい所得差が横たわっている点も指摘。金融危機以降、60代以上の所得が5倍に膨れあがったのに対し、一般的なミレニアル世代による20代の年間平均所得は8000ポンド(約115万円)も減っている。こうした様々な例を挙げ、その現状を浮き彫りにした。

これに加え、テクノロジーが起こした革命で市場のロボット化が進む近年、若い世代は雇用の危機にもさらされることになる。

カーニー総裁は英政府やエコノミストが早急に取り組むべき重要課題として、「バランスのとれた金融政策、財政政策、構造改革」「テクノロジーおよびトレード産業を含む企業の税金取り締まり強化」「グローバリゼーションから全市民が恩恵を得れる経済成長」を提案。

「結局、金融政策というのは人なつっこい亡霊のようなものだ」と、ここでも政策を実行するのは中央銀行ではなく、政府である点を強調した。(ZUU online 編集部)

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