ドナルド・トランプ氏がかかげている法人税引きさげの効果に、米信用格付け会社、ムーディーズや一部の専門家が疑問を投げかけていることが、CNNマネーの報道によって判明した。

これらの懐疑派は、大手国際企業が現在海外に滞留させている利益を米国に還流させたところで、結局は負債返済や自社株買い戻し、配当金の引きあげなどに流れる可能性を指摘しており、企業や株主にとっては利益をもたらす反面、雇用拡大などにはなんのプラス効果ももたらさないと見ている。

2004年の失敗の繰り返し?トランプ氏の意図は?

トランプ氏は選挙活動中、「海外に眠っている企業利益は5兆ドル(約589兆7000億円)に達する」と発言。法人税を35%から15%に引きさげることで、海外からの利益還流を狙った法人税改革を打ちだしている。

ムーディーズが12月に発表したデータによると、Apple、Microsoft、Google、Cisco、Oracleの5大企業が海外口座に滞留させている利益は5000億ドル(約58兆9700億円)にのぼる。そのほかの米企業による海外滞留利益は7840億ドル(約92兆4649億円)とされている。
Googleを除いた4社は過去5年間にわたり、自社株買いの繰り返しで負債総額が2590億ドル(約30兆5205億円)にまで膨張している。日本ではネガティブに受けとられがちな負債超過だが、米国では企業が株価を高める手段として利益配分を重視し、負債超過下での自社株買いも評価につながる傾向が強い。

返済期限が迫っている低金利下での負債も多いことから、「還流利益がそのまま負債返済に横流しされる」というムーディーズの推測が的中する可能性は高いかと思われる。

また2004年の失敗例も挙げられている。雇用創出法によって還流資金に対する実行税率が5.25%にまで引きさげられた際、本国に利益を還流させた企業は9700社中わずか843社だった。国内に持ちこまれた利益の多くは自社株買い戻しや株主への特別配当に回され、最終的には雇用をのばすどころか2万件以上の解雇が実施された。

こうした過去の事例や憶測を、トランプ氏がシナリオから省略しているとは考え難い。そうすると、トランプ氏の真の狙いは利益還流や雇用創出ではなく、企業利益の拡大に集中しているとしかいいようがない。真の狙いがどこに定められているかはともかく、少なくとも国民が望んでいる政策とはズレが生じているのは確かだ。(ZUU online 編集部)

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