今、ある仕組みが組込まれた投資信託が人気を呼んでおります。1994年投資信託の運用規制緩和に伴い登場したデリバティブ組み入れ投資信託で、これは先物やオプションなどの金融派生商品といわれるものを組み入れた投資信託をさします。通常の投資信託は株式や債券などで運用されますが、デリバティブ商品を組み入れることによってより大きな収益を確保することを目的として組成されました。しかし、例に漏れず、ハイリターンを目指すということはハイリスクにもなります。中身が複雑な投資信託なので中々手を出しづらい方もいると思われますが、NISAが始まった今、しっかりと理解した上で投資の幅を広げてみてはいかがでしょうか。
投資家心理
2012年11月の野田内閣の衆議院解散から株価は上昇を続け、日経平均は9000円から2014年1月の16000円をつけるまで、ほぼ一本調子に近い感じで株価を上げ続けました。俗に言われるアベノミクスによるものです。この状況の中、投資家心理は上向きとなり株式だけではなく様々な商品が活況を呈しました。
投資信託も例外ではありません。この投資信託において、売り上げを伸ばすファンドの中身が変化してきています。その最たるものがデリバティブを組み入れた投資信託です。
デリバティブが組み入れが人気?
2013年の1年間に新規で設定された投資信託は800を超え、過去最高となりました。その中でも年末に設定、販売開始された2本「ダイワ・スイス高配当株ツインα」と「日興UBS日本株式リスク・コントロール・ファンド」が注目されました。2013年秋〜2014年春にかけて新規募集された投資信託の設定金額(当初募集期間の販売金額)をランキングすると「ダイワ・スイス高配当株ツインα」は601億円で1位、「日興UBS日本株式リスク・コントロール・ファンド」は447億円で2位となったからです。共通点はデリバティブを組み入れているファンドであることです。
「ダイワ・スイス高配当株ツインα」はスイスの高配当株式を投資対象とし、株式のコールオプションの売却と通貨のコールオプションの売却によりオプションプレミアムの確保を目指す「カバードコール戦略」が組込まれたファンドです。もう一方の「日興UBS日本株式リスク・コントロール・ファンド」は、株価が割安で競争力の高い日本株式を投資対象としながら、株価指数先物を使って相場下落時のリスク低減を図るファンドです。両ファンドとも投資初心者には理解し難いデリバティブを組み入れた商品で、「大和証券」「SMBC日興証券」の単独販売商品です。大手証券会社とはいえ、単独でこの販売力には目を見張るものがあります。
募集期間に購入する?
さて、ここまで新規募集された投資信託の設定金額に注目してきましたが、こういった投資信託は当初の募集期間に購入した方がいいのでしょうか?
当初募集期間とは投資信託が運用開始される前の時点で購入できる期間をさします。この期間に購入すれば設定された基準価格(多くの投資信託が1万円)で購入できます。しかし、基本的に基準価格は買ったときの値段という意味しかなく、高い安いというのはあまり意味がありません。もちろん、限られた資金の中だと基準価格が高くなれば購入口数が少なくなるといったことや、自身の購入した基準価格が10000円なので運用成果が分かりやすいと言ったことはあるかもしれません。
しかし、それほど大きな価値はないと思います。そのファンドの運用開始タイミングが対象商品に対して上昇基調なのかどうかの方が間違いなく大切です。また、運用が開始されて様子を見てから購入することも一つの手です。よく新規での投信で過去のある期間からある期間でもし運用していたら、こういう素晴らしい成績になったと宣伝しているファンドがありますが、これだけを参考にしてはいけません。過去の運用成績がいいと言えるファンドは、都合のいい部分だけを切り取って誰でも組成できるからです。当たり前のことですが「投資」とは今から未来に向けてするものなのです。