総選挙,フランス,ドイツ
(写真=Thinkstock/Getty Images)

2016年は世界の政治で大きなサプライズが起きた年だった。6月23日の国民投票による英国のEU離脱、11月8日の米次期大統領選でのトランプ氏の勝利がその代表だ。根底には、世界的なポピュリズム(大衆迎合主義)の台頭があるとされている。

英EU離脱、米TPP拒否など、世界は保護主義化へ進むのか。2017年は欧州の選挙イベントが相次ぐ予定だ。ユーロ圏の政治情勢について要点を整理し、ポピュリズムの流れとテールリスク(確率は低いが発生すると非常に巨大な損失をもたらすリスク)を整理しておこう。

ポピュリズムの台頭の背景

ポピュリズムとは、一般大衆の利益や権利、願望、不安などを扇動することで支持を得て、既存のエリート主義である体制側などと対決しようとする政治思想、政治体制のことを言う。最近までブラジルの政権を握っていたルラ元大統領やアルゼンチンのキチネル元大統領はその典型で、そもそもは南米で多く見られた政治体制だった。ポピュリズムは格差社会や経済危機などを背景に台頭することが多い。

欧米にポピュリズムが台頭してきた背景にはリーマンショック後の世界経済危機と貧富の差の拡大があるようだ。米国ではポピュリストの大統領が誕生したことはないが、1929年に「大恐慌」と言われる経済危機があり、その後第32代大統領となったフランクリン・ルーズベルト氏とライバルであったヒューイ・ロング氏という政治家はポピュリストとして人気を集めた。1936年の大統領選で「4%の裕福層がアメリカの富の85%を支配している」と指摘、「我々の富をシェアしろ!」と主張した。「1%の富裕層が世界の富の半分を保有している(国際支援団体のオックスファム発表)」といわれる現在の状況と非常に似通っている。

リーマンショックは、エスタブリッシュメントやエリートの支配、ウォール街中心の経済発展から始まった格差社会の限界を示し、そのアンチテーゼとしてポピュリズムが世界的に認知されてきたのが背景だ。

2017年の欧州は選挙ラッシュ

16年の英国の国民投票で英国民はEUから離脱することを選んだ。EUによる移民増を否定したのだ。今まで自由貿易圏として発展してきたEUの時計の針が逆回転し始めた。英国に続く国がでてくるのか。

17年は多くの国で総選挙が行われる。17年の国政選挙の前哨戦となるイタリアの国民投票とオーストリアの大統領選挙が16年12月4日に行われた。

オーストリアの大統領選では極右の「自由党」ホーファー候補が敗北しポピュリズムの流れに歯止めを掛けたが、イタリアの国民投票では憲法改正を大差で否決し、レンツィ首相が辞任を発表した。

イタリアの国民投票は、イタリア上院の議席を減らし権限を縮小させる、地方政府を簡素化し中央政府との重複を解消する、この2点の憲法改正の是非を問うものだった。反対キャンペーンを展開したポピュリスト政党「五つ星運動」や「北部連合」の勝利だった。

フランスの極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン党首は、「北部連合」のマッテオ・サルヴェーニ党首に、ツイッターで祝福のコメントを送った。この選挙自体がポピュリズムの流れという訳ではないが、反EUを掲げる「五つ星運動」の影響力が高まれば、EU離脱の機運がでてくる懸念がある。

欧州では程度の差はあるものの、EUや移民に反対する極右政党の人気が増してきている。「PEW RESERCH CENTER」による2016年春の調査では、ギリシャ、フランス、英国、スペインなどでEUに対して否定的な比率が肯定的な比率を上回っていた。

オランダ総選挙(3月)

欧州2017年国政選挙の先鞭がオランダ議会選挙だ。オランダもEU離脱候補国だといわれている。オランダでは第一党の自由民主国民党が労働党と連立政権を組んでいる。反移民・反EU、国民投票実施を求めているヘルト・ウィルダース党首率いる極右の「自由党」が支持を拡大しているものの連立政権を倒すまではいかないというのがコンセンサス。どこまで勢力を伸ばすかが注目されている。

フランス大統領選(4月から5月) フランス総選挙 (6月)

フランスは景気低迷、テロなどで国民の不満が高まっており、ポピュリズムの流れが強い国の一つだ。オランド現政権の支持率が低迷する一方、移民排斥、反イスラム、EU離脱を問う国民投票の実施を訴えるマリーヌ・ルペン党首の極右政党「国民戦線」の人気が勢いづいている。共和党からは前大統領のニコラ・サルコジ氏も出馬を表明し、三つ巴の戦いが予測され、結果は読みづらい。17年最大のテールリスクにと考えられている。

6月に控える国民議会選挙では、大統領選で勝利した候補者の所属する政党が総選挙でも第一党になる可能性が高い。国民戦線が議席を伸ばせば、社会党と共和党によるフランスの二大政党制を揺るがすことにもなりかねない。

ドイツ総選挙 (8月から10月頃)

盤石と思われているメルケル現政権も、移民・難民問題でつまずきが出始めて支持率が低下し始めている。2016年の議会選では、メルケル首相の「キリスト教民主同盟(CDU)」の得票が伸び悩み、難民支援の削減を訴える極右「ドイツのための選択肢」が躍進した。

ドイツでも極右党が初の連邦議会での議席を獲得する可能性がある。EU統合を推進してきたフランスとドイツという2つの大国の国政選挙の結果次第では、欧州の政治的不透明感を加速する大きなテールリスクだと言えよう。

平田和生(ひらた かずお)
慶應義塾大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。国内外機関投資家、ヘッジファンドなどへ、日本株トップセールストレーダーとして、市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスをおこなう。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

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