人を教育するのではなく、システムで動かす

――各国に提携している企業があるのですか?

山川 そうです。タンザニアだけで4社あります。

――アフリカの人たちに御社が求める業務を適切にしてもらうためには、苦労もあるかと思います。どういう教育をされているのですか?

山川 大手企業からもよく聞かれるんですけど、教育はしていません。確かに、「DHLで届いた封書を開けて、中の書類をお客様に渡す」といったことさえしたことがない人たちが多くて、書類を紛失することもよくありました。そこで、業務の流れを細かく分解して、すべてシステムに落とし込んだのです。

たとえば、ある人が封書を開けたら、その人がログインしている画面で「封書を開けた」とクリックする。すると次の業務の画面に移って、中に入っている書類がそろっているか、チェックリストにチェックを入れていく。チェックが入らないと次の業務に進めません。そうして順番に業務を進めていって、「準備が整った」というクリックをすると、自動的にお客様に「納車の用意ができました」というメールが届く。そのように、ある業務をきちんとしないと次の業務に移れないシステムを構築したわけです。

はじめはタンザニアに10人ほどの社員が出向いて、このシステムを作り上げました。それからは、それぞれの国に合わせて少しずつ変えながら、コピーしただけです。

――企業のアフリカ進出を支援する事業も始められたということですが、これはなぜでしょうか?

山川 いろんな人から「どうやってるんですか?」と聞かれるからです。アフリカ市場に興味を持っている企業は多い。しかし、興味を持っているだけで、実際に動けている企業はほとんどありません。当社は、そういう企業に「一緒にやりましょう」と言っています。当社の強みを利用していただきたいと思っているのです。

アフリカにおける当社の強みは三つあります。一つ目は高いブランド力。二つ目は、商品を渡す前にお金を支払っていただけるだけの信用力。三つ目がロジスティクスです。クルマのような大きなモノをアフリカに大量に送っている企業は他にありません。ですから、海運会社に融通を利かせていただいて、クルマと一緒に他の商品も送れるのです。実際、中古車だけでなく、クルマのパーツの輸出も行なっています。新興国の人たちはクルマを修理しながら長く乗りますから、交換部品は必需品なのです。バイクや農機具の輸出もしています。

たとえば、地方の小さな工作機器メーカーがアフリカ市場に興味があるという場合、なかなか自力で動くのは難しいでしょう。そこで、ブランド力や信用力がある当社が現地のネットワークを使ってパートナーを探し、紹介する。ビジネスが動き出せば、当社のロジスティクスも使っていただく。これからは、そういう事業も展開していきたいと思っています。

ビジネスマンとして学ぶべき点が多い成功例

英語のウェブサイトを立ち上げたことから中古車輸出業が軌道に乗ったということだが、山川氏はもともと英語に堪能だったというわけではなかったそうだ。英語の勉強を始めたのは輸出業を始めてからで、毎朝7時から、10年以上にわたって続けているという。

英語ができなくても英語のウェブサイトを立ち上げたことで、思わぬ市場を発見し、成功したというのは、準備を周到にしようとしてなかなか動けないビジネスマンにとって、大いに刺激になるだろう。

また、顧客への丁寧な対応やシステムの導入による効率化、ブランディングなど、ビジネスの基本をきちんと守れば成功するのだということも、ビィ・フォアードの成功から確かめられる。

さらに、日本の製品やサービスは世界中で通用するということを示す、日本人を勇気づける事例でもあるだろう。もちろん、アフリカ市場では日本並みの高品質・高価格の商品は受け入れられないわけで、そのままでいいわけではないのだが。

ビィ・フォアードの成功例は、さまざまな課題を抱えたビジネスマンが、それぞれの角度から学びを得られるものではないだろうか。

山川博功(やまかわ・ひろのり)〔株〕ビィ・フォアード代表取締役
1971年、鹿児島県生まれ。明治大学卒業後、大手自動車販売会社に勤務。大学在学中からオートレースに出場し、その費用捻出のため、運送業や宝石販売などに転職。99年、自動車の買取りを手がける〔有〕ワイズ山川を設立。2004年、〔株〕ビィ・フォアードを設立。月間約1万5,000台の中古自動車を、アフリカをはじめ世界124カ国に輸出する企業に成長させる。(人物写真撮影:まるやゆういち)(『 The 21 online 』2016年11月25日 公開)

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