EU(欧州連合)離脱交渉を目前に控えた英国だが、駐EU大使が突然辞任表明するという予想外の展開に、またひとつ不安材料が増えたとの印象が否めない。
テリーザ・メイ首相は後任者探しに奔走していると報じられているが、現時点では有力な候補者の名は挙げられておらず、交渉開始の延期や「Hard Brexit(強硬離脱)」への懸念が高まっている。その一方で今回の辞任劇を歓迎する声も上がっている。
「EUびいき」が英政府の神経を逆なで、ファラージ氏「外務省は総入れ替えが必要」
1月3日、豊富な知識と経験をもって離脱交渉を進められる数少ない外交官として期待されていたアイバン・ロジャーズ駐EU大使の辞任が、一斉にメディアに報じられた。英BBCはジャーズ駐EU大使がブリュッセル駐在の同僚に宛てて送ったEメールの全文を掲載。ロジャーズ駐EU大使は11月を予定していた辞任を今月半ばに早めた理由を、「離脱交渉開始から完了まで、同じトップが継続して担当するのが最善」と説明した。
しかし実際に早期辞任の最終的な引き金となったのは、ロジャーズ駐EU大使とメイ首相側の対立関係のようだ。2013年、キャメロン政権下で大臣に就任して以来、数々の外交交渉を根気強く取りまとめてきたロジャーズ駐EU大使だが、EU離脱交渉をめぐり新政権との関係が悪化していると報じられていた。
「Europhile(EUびいき)」として知られるロジャーズ駐EU大使の見解は、駐EU大使自身の言葉を借りると「不愉快な真実」に蓋をしようとする、一部の英国官僚の神経を逆なでする結果となった。
またロジャーズ駐EU大使はEメールの中で「(英政府の)根拠のない議論や統一性に欠ける見解に異議を申し立て、権力を握る者に真実を伝えることを恐れるな」と同僚に呼びかけ、英国が最善の結果を得るうえで、そうした「不愉快な真実」にも耳を傾けることが必須だとしている。
今回の辞任騒ぎに対し、政府側は様々な反応を見せている。BBCのラジオ番組に出演したサイモン・フレーザー元外務省主任は、「英国は素晴らしい専門家のひとりを失った」とコメント。自由民主党のティム・ファロン党首も「英政府が稀にみる重大な決断をくだすべき時に、メイ首相は確固たる戦略もなく離脱交渉に挑もうとしている」と批判的だ。
しかし一部からはロジャーズ駐EU大使の辞任を歓迎する声も聞かれる。EU離脱支持者の代表的存在で、昨年11月まではイギリス独立党党首を務めたナイジェル・ファラージ氏は、「いずれ外務省は総入れ替えが必要になる。ロジャーズ駐EU大使の辞任が皮切りになればいいのだが」と辛口だ。同じくEU懐疑派の保守派下院議員、ジョン・レッドウッド氏もロジャーズ駐EU大使が離脱交渉に乗り気ではなかった点を指摘。「離脱すると決めたからには複雑なプロセスを避け、さっさと抜けるべきだ」とコメントしている。(ZUU online 編集部)
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