金融安定理事会(FSB)が2月1日、中央清算機関(CCP)を強化するガイダンス草案を発表した。CCPが金融安定化には欠かせない存在となった近年、どのようなリスクにも耐えうる金融インフラを構成しようという試みだ。

具体的にはトラブル発生時の効果的な対処法に関する国際基準を設けることで、CCPの破綻リスク・被害を最小限に抑えるフレームワーク作りを促進する。

「万能の解決策」ではないCCP 政策的枠組みの明確化は必須

金融市場に多大なる打撃を与えた2009年の金融危機以降、様々な強化政策が打ちだされた。中でも最大の被害規模となった店頭デリバティブ市場の改革として、CCPをとおした契約取引決済の義務化が世界各地で進んでいる。

しかし肝心のCCPが破綻しないという保証はどこにもない。この点はイングランド銀行のポール・タッカー元副総裁が指摘していたとおり、過去に数回にわたり清算機関は破綻危機に直面している。

タッカー元副総裁は一例として、1987年10月19日、ニューヨーク証券取引所から広がった「ブラックマンデー(暗黒の月曜日)」を挙げている。壊滅的な打撃をこうむった香港先物取引所では預託た証拠金の引きだしが不可能な状態に陥り、最終的には政府が清算機関の復旧に乗りだす騒ぎに発展した。

こうした事例を踏まえ、CCPが万能の解決策ではないこという前提で、緊急時の損害を最低限におさえるためのフレームワークが必須となる。この点についてはG20の首脳会議で以前から盛んに議論されていた。

FSBのウェブサイトによると、今回発表された草案は「破綻させるには巨大すぎる」機関に関するシステミック・リスク(ドミノ破綻)やモラル・ハザード(倫理の欠落)に焦点を当てた政策的枠組みを明確化するための第1歩だ。

草案では「経済安定を維持するうえでのCCPの破綻処理計画」「処理能力の有効性を確保するための機関による権限範囲(破綻処理に移行するタイミングの見極めなど)」「緊急時に機動する専門マネージメントチームの設立」など、CCPの危機に効率的に対処し被害を最低限におさえるための提案がなされている。

7月ドイツで開催予定のG20首脳会議に先駆けて最終的な議論がおこなわれ、2018年中にはより具体的なガイダンス作成に着手される。(ZUU online 編集部)

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