中国、アジアのリスク

一方、機械事業の2015年3月期海外売上高は前期比+495億円(+6.0%)増の8700億円と計画していますが、2014年3月期の+30.4%増と比べて伸びは鈍化しています。伸びが鈍化している主な要因は、中国とタイにおける売上の下振れリスクを考慮しているためです。中国では従来、年間200億元(約3200億円)程度あったクボタの農機に対する補助金は停止しており、コンバインや田植機については、非常に保守的な計画を見積もっているとのことです。中国における建機市場は昨年から回復していますが、農機市場が不透明なため、下振れリスクがあるとみています。同様にタイでも政局の混乱による政府の支払い遅延により、トラクタ・コンバインの市場は混乱しており、下振れリスクが高いとクボタを見ています。なお、周辺国への販売強化がタイへの売上の落ち込みを挽回する計画です。このようにアジアでの農機の主な市場であるタイ、中国での不透明な状況があるが故に、海外売上について保守的な数字を出さざるを得ない状況になっています。


今後の小型建機市場の見通し

一方、小型建機市場の見通しについて、北米では堅調、欧州や新興国で回復傾向、日本でも復興重要や東京五輪の開催で需要は堅調であるとの見通しをクボタは持っています。この見通しは正しいのか、売上高に先行する受注高について、内閣府の機械受注統計から検証して参ります。図2は、機械受注統計の建設機械、鉱山機械、農林用機械に関する受注高になります。

図2 建設機械、鉱山機械、農林用機械の前年同月比推移(単位:%)

建設機械

鉱山機械

農林用機械

2014 年1月

+23.5%

+9.6%

+33.9%

2014 年2月

+10.2%

+2.1%

+30.6%

2014 年3月

-0.7%

+69.4%

+3.1%

2014 年4月

-6.0%

-7.6%

-4.9%

出所:機械受注統計(内閣府)

図2を見ると、消費税増税の2014年4月の受注高は揃って前年比マイナスであるものの、一ケタ台のマイナス幅となっています。クボタは国内の機械事業の売上高を▲12.8%減と予想していますが、この受注統計の数字、また、北米の景気が好調なことを考慮すると幾分保守的すぎる予想のように考えられます。また、小型建機の競合であるコベルコ建機では、2015年3月期の売上高を前期比+6.8%の3,400億円、営業利益を前期比+22.1%増の300億円と予想していることから、今期の小型建機市場は国内、北米を中心に堅調な市場であると考えられ、これからもクボタの予想は幾分保守的と思われます。


競合他社との指標面での比較

では、建機市場の競合相手であるコマツ、日立建機と比較してクボタの指標にどんな特徴があるのかを分析して参ります。図3は、建機大手であるクボタ、コマツ、日立建機の各種指標を比較したものですが、クボタはROEが3社の中で一番高く、資産の効率性という観点からはトップになります。しかしながら、一株当たり利益がコマツ、日立建機に対して劣っているため、株価があまり伸びていないことが考えられます。今後は一株当たり利益を伸ばすことが課題と思われます。

図3 クボタ・コマツ・日立建機の株価・財務指標

クボタ

<6326>

コマツ

<6301>

日立建機

<6305>

株価(円)

1,439

2,356

1,991

時価総額(億円)

17,991

23,162

4,282

売上高(億円)

15,086

19,537

8,030

純利益(億円)

1,317

1,595

289

EPS(円)

104.94

167.36

211.86

ROE(%)

15.55

12.42

7.72

PER(倍)

13.89

14.58

9.40

出所:各社IR情報より筆者作成


更なる自社株買いに期待

クボタの一株当たり利益が低く、成長への明確な青写真を打ち出せていない状況では、自社株買いを行うことで、一株当たり利益を高めることが株価上昇に有益であると考えられます。実際、2014年3月に自己株式620万株(発行済株式数の5.0%)を消却していますが、更なる自己株買いに期待したいところです。

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