鉄鉱石は主に資源国である豪州よりアジア向けに輸出される構図となっており、アジアの中でもとりわけ中国向けの輸出が極めて 多い事が知られています。この事から鉄鉱石価格は中国向けの価格が基準となり、他国への価格もこれに連動しています。鉄鉱石 価格は4半期ごとに大手取引間で改訂されますが、2014年5月に入り2012年以来の安値に近付きつつあります。鉄鉱石価格は長期 的に見ると1トン当たり100ドル~140ドルの価格帯をレンジで推移しており、今回はさらに一段安の様相を呈しています。マーケ ットは100ドル割れも視野に入れた値動きとなっており今後の展開が注目されています。鉄鉱石価格と中国経済の相関関係は非常 に強く、実体経済が後退局面に差し掛かったかどうかが焦点となりそうです。
鉄鉱石の下落トレンドの原因は世界的に見て供給過剰な状態である事が根本的な原因とみられており、主な理由は以下の様に考え られています。
1.豪州資源大手のヴァーレ、リオ・ティント、BHPビリトンの生産能力拡大により供給過剰な状態である事
世界的な景気回復局面による中国需要拡大を見込み、資源大手が生産能力を競って拡大してきた事が背景にある様です。中国 の鉄鉱石輸入量は前年比+6%(約9億トン)と強気な見込みであるにもかかわらず、資源大手の供給量能力が1億トン増加し た為鉄鉱石価格の下落要因となっています。
2.中国における鉄鉱石過剰在庫が過去最高レベルまで達しており、依然解消される目処が立っていない事
2014年に入りアナリストの多くは中国の鉄鉱石輸入量が減少すると見込んでいたが、予想に反して大幅な伸びを見せていま す。この輸入量の増加は明確な需要と結び付いていないと見られており、過剰在庫を抱えている企業に対して信用リスクを警 戒した動きが出始めている様です。
2014年1~3月期の中国GDPは年間目標を下回っており、足元では中国国内の内需減速も鮮明になり始めています。マーケットが 注目しているのは、鉄鉱石の供給在庫状態がいつ解消されるのかという点です。 金融危機から回復しつつあるアメリカ、EUへの輸出が中国経済のカギを握っています。輸出を促進する為の規制緩和等について 習近平政権が改革を進める事が市場から期待されていますが、中国国内で山積みとなっているシャドーバンキング、地方都市部の 格差等の問題をどの様にソフトランディングさせるかが課題となってきそうです。
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