TPP交渉
(写真=JStone/Shutterstock.com)

トランプ米大統領が自動車貿易をめぐり、日本を名指しして「不公平」だと批判した。1月28日の安倍晋三首相との電話会談でも「日本の自動車業界にもぜひ米国で雇用を生み出してほしい」と要求してきた。米国は、「日本でアメリカ車が売れないのは非関税障壁があるためだ」とTPP交渉でも日本を攻撃し続けた。これまではナイーブに米国の要求を受け入れがちな日本だったが、今度こそは自動車貿易の現実を踏まえ、キッチリと主張したいものだ。

日米クルマ貿易の現状

トランプ発言アメリカの姿勢を考えるうえで、まず知っておきたいことは関税の税率設定の現状だ。日本が米国に輸出する際、乗用車は2.5%。一方、キャビンの後ろに開放式の荷台がある非大型トラックであるピックアップトラックにはなんと25%もかけられている。

このピックアップトラックはアメリカで若者を中心に非常に人気を集める車種で、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』では主人公のマーティーが憧れる車として描かれた。それだけ稼ぎ頭でもあるピックアップトラックに乗用車の10倍もの関税がかけられているのだ。

最近では、SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビーグル)と呼ばれるサーフィンやスキー、キャンプなどの娯楽に適した車種も人気を博している。この車種はトヨタのハリアーなどSUV風のスタイリングと快適性を持たせたクロスオーバーSUVにシフトしているが、この車種はどう考えても乗用車なのに、なぜかピックアップトラックとみなされ、25%の関税がかけられているのだ。

一方、米国が日本に輸出する際の関税はゼロだ。それなのに、米国は日本には「非関税障壁」が存在すると主張する。「日本は安全基準や輸入車に課される試験が厳しすぎる」、などというものだ。これはトランプ大統領自身がご破算にしたTPP交渉でさんざん吹っかけてきた無理難題と言えるもので、日本側はほとほと手を焼いてきた。

「日本は米側にこれまでも非関税障壁はない、米国車が売れないのにはそれなりの理由があると言い続けてきた」。米国にこれといった批判を手控えている安倍晋三首相でさえ、1月30日の参院予算委員会で、こう首をかしげる始末なのだ。

このような条件下で、米国市場でのシェアは、GM(17%)、フォード(15%)に次いでトヨタ(14%)が3位となっている。クライスラー(13%)に続き、ホンダ(9%)は5位、ニッサンは(8%)は6位と日本勢は大健闘している。アメリカで走る車の3台に1台は日本車なのだ。

アメ車が売れない理由

これに対し、日本市場でのシェアは上位6位までが国産。海外メーカーもVW、BMW、メルセデス(いずれもドイツ)が82%と圧倒的で、アメ車のシェアは8%しかない。日本市場ではアメリカ車は売れていないのだ。日本が規制でアメ車を締め出しているというのなら、まずはドイツ並みに売ってからそういう主張してほしいものだが、それはさておき、なぜアメ車は売れないのか。

それは、アメ車は米国で走ることを前提としており、日本人に合わせた作り方をしていないからだ。広大な大地をほぼノンストップで走破する彼らに対し、日本では信号や渋滞で止まったりノロノロ運転となったり、道路が狭く、カーブだらけという道路交通事情がある。内部メカに影響する高温多湿の環境も、そもそも相性がよくない。

ある中古車ディーラーがいう。「日本では小さい排気量のエンジンでもハイパワーを出せるし、燃費がいいエコカーやハイブリッド技術を生んできた。なのにアメリカのメーカーはそういったことに興味は示さず、昔ながらの技術で作ってきた。特に燃費の悪さがネック。今の日本では燃費が悪いとどんなに素晴らしい車でも売れない」。これでは需要は見込めない。

結局、どうすればいいのか?

「日本側は米国車の魅力や販売努力の不足が米社不振の根っこにあると批判するが、米メーカーにしてみれば日本市場への本格参入よりも、米側の関税を維持するほうがはるかに優先度が高い。ピックアップトラックが『ドル箱』だからだ。日米協議が迷走し続ける方が利益にかなう」1月31日付の日経新聞電子版では、こんな解説をしている。つまり、米メーカーは稼げるピックアップトラックで25%の関税という不利な戦いを日本に押しつけ続けることしか考えていないのだ。「不公平」なのはどっちなんだといいたくなる。

トランプ大統領は当選後、ビッグスリー(GM、フォード、クライスラー)を呼び、会談した。この会談後、日本との自動車貿易を批判したということは、会談で「いかに日本車を売れなくするか」ということを話し合ったと考えてよいだろう。そして、冒頭の「日本の自動車業界にもぜひ米国で雇用を生み出してほしい」というトランプ大統領の発言につながる。

米国メーカーが生産を減らす一方、日系メーカーは1999-2015年で149万台を増産し、雇用も増やした。日系企業の米国での雇用数は2014年実績で83.9万人に上る。うち自動車を含む製造業は38.3万人だ(みずほ銀行産業調査部調べ)。

こんな現実に目を背け、「日本車が売れていること自体、不快だ。性能が悪くてもアメ車を買え」というのは理解に苦しむ。2月10日には日米首脳会談が行われる。経済の実態を直視しないトランプ大統領に、安倍首相は今度こそキッチリ主張すべきだろう。(飛鳥 一咲 フリーライター)

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