SG証券・会田氏の分析
(写真=PIXTA)

シンカー:グローバルに生産・在庫循環が好転してきたことが、日本の成長を支え始めている。実質総賃金の拡大と新たな景気対策の効果の発現もあり、2017年後半に向けて成長率は再加速していくとみられる。

10-12月期の実質GDPは前期比+0.2%(年率+1.0%)となった(コンセンサス+1.0%程度)。

7-9月期は同年率+1.3%から+1.4%へ若干上方修正された。

2016年1-3月期から前期比年率+2.3%・+1.8%・+1.4%となっており、景気の持ち直しがマーケットの予想以上に進行してきたことが確認された。

成長を支えているのは、グローバルに生産・在庫循環が好転していることだ。

日本ではもともと在庫調整がかなり進展してきていた上に、円安の追い風もあり、昨年末に経済産業省は鉱工業生産の判断を「持ち直しの動き」へ上方修正している。

実質輸出は前期比+2.6%と、7-9月期の同+2.1%の後としては強い結果となった。

10-12月期の実質輸入は、これまでの原油価格の上昇と、昨今の円安による手控えもあったが、先行きの生産増への対応などもあり、同+1.3%と5四半期ぶりの増加となった。

結果として、実質GDP前期比に対する外需の寄与度は+0.2pptと強かった。

このような環境は、企業活動の持ち直しにもつながっているようだ。

10-12月期の実質設備投資は同+0.9%と、7-9月期のマイナス(同-0.3%)から明確に持ち直した。

資金循環統計で上昇してしまっていた企業貯蓄率が再び低下を始めたことと整合的な動きだ。

一方、実質消費は同0.0%と弱かった(7-9月期は同+0.3%)。

10-12月期の名目雇用者報酬(総賃金)は前年同期比+2.0%としっかり拡大し、雇用・所得環境は明確に改善を続けているが、天候不順により生鮮食品価格が急上昇し、消費活動を抑制したとみられる。

しかし、生鮮食品価格は安定を始めており、政府が2月から新たに取り組むプレミアムフライデーによる消費促進策の効果もあり、1-3月期には実質消費は再び増加を始めるだろう。

10-12月期の実質GDP前期比に対する民間の寄与度は0.0pptとなった。

現在、以前の景気対策の効果が減衰し、これまで成長を支えてきた公的部門の支出が弱くなっている。

10-12月期の実質公共投資は前期比-1.8%と2四半期連続でマイナスとなっている。

昨年秋の臨時国会では新たな景気対策が決定したが、その効果が出るまでの端境期にあると考える。

これが、実質GDP前期比年率が1-3月期から伸び率が縮小してきているように見える理由だろう。

しかし今後は、新たな景気対策による災害復旧関連工事やインフラ整備、財政投融資と投資減税の効果、そしてオリンピック関連投資の本格化が支えとなる。

減速してきたように見えるもう一つの理由は、10-12月期の実質民間在庫の実質GDP前期比寄与度が-0.1pptと、7-9月期の同-0.3pptに続きマイナスになるなど、在庫調整が急速に進展してきたことで、これは先行きの成長にとってプラスである。

10-12月期のGDPは成長率の再加速に向けた種が見え、2017年後半に向けて成長率は再加速していき、潜在成長率を上回る成長を続けると考える。

表:GDPの結果

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
会田卓司

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