SG証券・会田氏の分析
(写真=PIXTA)

シンカー:グローバルな生産・在庫循環の好転を背景に、2016年10-12月期の堅調なGDPは成長率の再加速に向けた種が見えた。2017年後半に向けて成長率は再加速していき、潜在成長率を上回り続けると考える。2月10日の日米首脳会談では、米国の貿易赤字や円安は大きな問題として取り上げられず、日米同盟と経済協力を一層強化する方向性を確かめた。その背景として、安倍首相は、日本の内需拡大、防衛費の増加、成長戦略の推進による規制・制度改革、そして米国へのインフラ投資とシェールなどを含む米国からの輸入の増加、米国の財政ファイナンスの支えとなる米国債への投資の継続に明確にコミットメントしたとみられることも、現行の金融・財政政策の継続の可能性を高め、日本の成長率を支えるだろう。安倍首相は、デフレ完全脱却へ強くコミットメントしており、内需拡大は重要な課題となっており、デフレ完全脱却と米国の貿易赤字の縮小を同時に達成できるWIN・WINの形にもっていこうとする意図があるとみられる。マーケットは、今後のFEDの利上げにともなう日米金利差拡大によるマーケットメカニズムによる自然な緩やかな円安は許容されると見るだろう。デフレ完全脱却への動きがより意識されるようになる可能性が高まったと考える。

2017年の実質GDP成長率予想を引き上げ

2017年の実質GDP成長率の予想を+1.0%から+1.2%に引き上げた。

一つ目の理由は、2016年末に行われたSNAの改定の影響である。

研究開発費が設備投資として計上され始め、内閣府は7-9月期時点の潜在GDP成長率を+0.8%とこれまでの+0.3%から上方修正している。

日本の設備投資は生産能力拡大よりも、労働力不足への対処としての効率化投資などによる生産性の向上と新製品・サービスなどによる内外需の掘り起こしに重点が移ってきており、SNAの改定によりに成長率がより実体に近い堅調な結果として表れやすくなったと考えられる。

潜在成長率は、政府の成長戦略の推進による規制・制度改革や、そのもとでの労働市場改革が女性や高齢者による労働参加と労働時間を増加させ、企業活動の回復とデフレからの脱却が相乗効果となり資本ストックの積み上がりと生産性の上昇が着実に進んでいくにつれて、緩やかな上昇傾向をたどっていくだろう。

内閣府の潜在成長率の推計の上方シフトなどにより、2018年の実質GDP成長率の予想も+1.0%から+1.3%に引き上げ、2019年以降も上方修正となっている。

二つ目の理由は、グローバルに生産・在庫循環が好転していることが、日本の景気の持ち直しをマーケットの予想以上に進行させてきていることだ。

実質GDP成長率は、2016年1-3月期から前期比年率+2.3%・+1.8%・+1.4%・+1.0%となり、2015年の1.2%という強い結果の後でも、2016年は+1.0%と堅調に推移してきた。

特に10-12月期は、実質輸出は前期比+2.6%と、7-9月期の同+2.1%の後としては強い結果となった。

もともと在庫調整がかなり進展してきていた上に、円安の追い風もあり、2016年末に経済産業省は鉱工業生産の判断を「持ち直しの動き」へ上方修正している。

このような環境は、企業活動の持ち直しにもつながっているようだ。

10-12月期の実質設備投資は同+0.9%と、7-9月期のマイナス(同-0.3%)から明確に持ち直した。

資金循環統計で上昇してしまっていた企業貯蓄率が再び低下を始めたことと整合的な動きで、企業活動の回復が効率化と内外需の掘り起こしを企図する設備投資の拡大につながり、それが潜在成長率を押し上げる形が明確になっていくと考える。

一方、10-12月期の実質消費は同0.0%と弱かった(7-9月期同+0.3%)。

雇用・所得環境は明確に改善を続けているが、天候不順により生鮮食品価格が急上昇し、消費活動を抑制したとみられる。

しかし、生鮮食品価格は安定を始めており、政府が2月から新たに取り組むプレミアムフライデーによる消費促進策の効果もあり、1-3月期には実質消費は再び増加を始めるだろう。

失業率は3%程度まで低下し、2016年の名目雇用者報酬は+2.0%としっかり拡大しており、2017年は物価上昇が遅れていることによる実質賃金の上昇、そして資産価格の上昇の影響が消費をしっかり押し上げていくだろう。

成長率の再加速に向けた種が見えてきた

現在、以前の景気対策の効果が減衰し、これまで成長を支えてきた公的部門の支出が弱くなっている。

10-12月期の実質公共投資は前期比-1.8%と2四半期連続でマイナスとなっている。

昨年秋の臨時国会では新たな景気対策が決定したが、その効果が出るまでの端境期にあると考える。

これが、実質GDP前期比年率が1-3月期から伸び率が縮小してきているように見える理由だろう。

しかし、今後は、新たな景気対策による災害復旧関連工事やインフラ整備、財政投融資と投資減税の効果、そしてオリンピック関連投資の本格化が支えとなる。

減速してきたように見えるもう一つの理由は、10-12月期の実質民間在庫の実質GDP前期比寄与度が-0.1pptと、7-9月期の同-0.3pptに続きマイナスになるなど、在庫調整が急速に進展してきたことで、これは先行きの成長にとってプラスである。

海外経済の成長率が緩やかに高まり、設備投資を中心とする企業活動の回復、実質賃金の上昇による消費の回復、そして政府の経済対策の効果の発現を背景に、今後の成長率は加速していき、潜在成長率を上回る成長を続けると考える。

グローバルな生産・在庫循環の好転を背景に、2016年10-12月期の堅調なGDPは成長率の再加速に向けた種が見えた。

2017年後半に向けて成長率は再加速していき、潜在成長率を上回り続けると考える。

2月10日の日米首脳会談では、米国の貿易赤字や円安は大きな問題として取り上げられず、日米同盟と経済協力を一層強化する方向性を確かめた。

その背景として、安倍首相は、日本の内需拡大、防衛費の増加、成長戦略の推進による規制・制度改革、そして米国へのインフラ投資とシェールなどを含む米国からの輸入の増加、米国の財政ファイナンスの支えとなる米国債への投資の継続に明確にコミットメントしたとみられることも、現行の金融・財政政策の継続の可能性を高め、日本の成長率を支えるだろう。

安倍首相は、デフレ完全脱却へ強くコミットメントしており、内需拡大は重要な課題となっており、デフレ完全脱却と米国の貿易赤字の縮小を同時に達成できるWIN・WINの形にもっていこうとする意図があるとみられる。

マーケットは、今後のFEDの利上げにともなう日米金利差拡大によるマーケットメカニズムによる自然な緩やかな円安は許容されると見るだろう。

デフレ完全脱却への動きがより意識されるようになる可能性が高まったと考える

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
会田卓司

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