カカクコム が運営する「価格.com」や「食べログ」は筆者も利用するお気に入りのサイトだ。友人からメールで飲み会に誘われたときも「食べログ」のURLが貼られていることも多い。読者のみなさんも、同社のWebサイトやアプリを利用されている人が多いのではないだろうか。

そのカカクコムに異変が起きている。
2月2日、同社は上場後初となる業績の下方修正を発表したのだ。この日の株価は267円安(13.4%安)の1726円と大きく売られ、その後もさえない動きが続いている。日本を代表する「ネット企業の優等生」にどんな変化が起きているのだろうか?

「価格.com」が四半期ベースで減収に転じる

まずは、カカクコムが発表した2017年3月期第3四半期(4〜12月)までの決算を見てみよう。

4月〜12月の実績は、売上が11.7%増収の332億円、本業の利益を示す営業利益は12.3%増益の154億円だった。いずれも2桁の増収益に加え、営業利益率は46.4%もあり、まったく問題のない決算内容に見える。

しかし、10〜12月の3カ月でみると売上は8.0%増、営業利益は6.4%増とスローダウンは否めない。特に気がかりなのは、主力の価格比較サイト「価格.com」の四半期ベースの売上が前年同期比0.6%減と「減収に転じた」ことだ。

「価格.com」は商品が売れたときに手数料を課金するビジネスモデルであるが、主力商品であるデジタルコンシューマー機器の不振で売上が落ち込むとともに、広告事業も減少している。ショッピング事業の売上は5.9%減の24億円、広告事業にいたっては13.3%減の12億円と大幅な落ち込みとなっている。

同社は中間発表時に「価格.com」の不振を背景に、2017年3月通期の業績修正を発表。売上を480億円から450億円に、営業利益を230億円から210億円に下方修正した。高成長・高収益を続けてきたカカクコムの下方修正は、株式市場で「ネガティブ・サプライズ」と受け止められ、売り注文が殺到したのだ。

上場後「初の下方修正」が意味するものとは?

1997年、カカクコムは価格比較サイトを運営する企業として創業した。2003年に東証マザーズに上場し、2年後の2005年には東証1部に移行、同年には「食べログ」をスタートするなど順調に事業を拡大してきた。10年連続で過去最高益を更新しており、過去5期で売上も営業利益も倍以上に成長している。そんな同社が上場して初めて業績を下方修正したのだ。

「食べログ」部門は好調を維持している。課金飲食店数は12月末で5万2900店を突破し、売上高は48億円と前年同期比で17.6%増、1月にはネット予約サービスの累計予約人数が1200万人を突破するなど順調そのものだ。

今後のキーポイントは、やはり「価格.com」の動向だろう。「価格.com」の停滞が景気循環という一過性なものなのか? それとも、すでにこの分野でのEC(電子商取引)ビジネスが成熟期を迎えているのか? いずれかによって中長期的な展望も変わってくる。

単なる景気循環? ECビジネスの限界?

ところで、カカクコムは今下期より「価格.com」の全面改修を進めている。コンテンツの改善の進捗率は12月で50%で、3月末までには全面リニューアルが完了する見通しだ。新サイトでは、ビジュアル的な見やすさに加え、検索頻度の高い関連キーワードを特定し「精度の高い商品の絞り込み」が可能になるなどユーザーの使い勝手が向上するという。

ただ、経済産業省のECに関するデータによると、2015年のEC市場の規模は13.8兆円と前年比では8%弱の伸びにとどまっている。決して低い伸びではないが、2010年代前半に見られた2桁の伸びに比べるとスローダウンは否めない。特に「価格.com」の主力商品である「生活家電・AV機器・PC・周辺機器」のEC化率は28%にまで達している。

こうした状況を加味すると、カカクコムの上場後初となる業績の下方修正は「生活家電・AV機器・PC・周辺機器」のECビジネスが成熟し、限界を迎えていることを示唆しているのかも知れない。もちろん、単なる景気循環的な売上減の可能性も否定はできないが、2017年3月期決算で、業績不振の本質的な問題を確認するまで投資家も仕掛けにくい状況が続きそうだ。(ZUU online 編集部)

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