SG証券・会田氏の分析
(写真=PIXTA)

シンカー:過去の原油価格下落と円高の下押し圧力が消え、足元の原油価格上昇と円安の押し上げ圧力に変わる物価の転換点に来ている。労働需給の引き締まりも上昇圧力となり、物価上昇率は年末までには1%程度まで上昇しているだろう。

1月のコア消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年同月比+0.1%と(12月同-0.2%)、13ヶ月ぶりに上昇に転じた。過去の原油価格下落と円高の下押し圧力が消え、足元の原油価格上昇と円安の押し上げ圧力に変わる転換点に来ている。

1月の季節調整済前月比は+0.3%、4ヶ月連続の上昇となり、足元の物価上昇圧力の回復がよく表れている。1月のコアコア消費者物価指数(除く食料・エネルギー)の季節調整済前月比は0.0%と、ほぼ一年間横ばい圏内の動きであり、まだ食料とエネルギー以外の上昇圧力が強くなっているとは言えない。前年同月比は+0.1%となり、12月の0.0%から2ヶ月ぶりの上昇に転じたが、上昇に加速感はまだない。

企業の強い雇用不足感によりパートタイマーの時給は大きく上昇しており、サービス業を中心に物価上昇圧力が徐々に強くなると予想される。サービス価格は4月の年度初めに改定されることが多く、4月以降は上昇に加速感が生まれるだろう。

しっかり増加を続けている雇用者の総賃金に対して物価の上昇は遅れており、実質賃金の上昇が需要を増加させる形になっている。年後半には需要の回復による物価の持ち直しも見えてくるだろう。12月までにはコア消費者物価指数の前年同月比は1%程度まで上昇していると考えられる。

2月の東京都区部は、コアが前年同月比-0.3%(1月同-0.3%)、コアコアが同-0.1%(1月同0.0%)と、大きな動きはなかった。1月のコア季節調整済前月比が+0.2%とかなり強かったため、その反動が懸念されたが、2月は同0.0%と落ち着いた結果であった。

1月の失業率は3.0%と、12月の3.1%から若干低下し、10月以来の低水準になった。年末商戦では、消費喚起のため、企業は様々な販売促進策を試み、雇用の増加につながったとみられる。12月は、労働力人口の大幅な増加が、就業者の大幅な増加で吸収される良好な結果であった。1月には、企業の雇用不足感を背景として、就業者は反動はなく増加を続け、失業率を低下させた。

企業は4月の新年度からの業務拡大に向けて、採用活動を拡大しているようだ。1月の有効求人倍率は1.43倍と、12月から変化はなく、1991年7月以来の高水準となっている。

失業率の大幅な低下があらわす労働需給の引き締まりに対して、総賃金の拡大はまだ緩やかである。これは、ネットの資金需要(企業貯蓄率と財政収支の和)が消滅し、企業と政府から家計への富の分配の力がまだ弱いからであると考えられる。

財政政策は引き締めから緩和に既に転じていること、企業活動の回復を示す企業貯蓄率の低下も既に確認されており、ネットの資金需要の復活が総賃金の拡大を加速させるようになってくると考える。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
会田卓司

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