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(写真= Linda Moon /Shutterstock.com)

マーケティングの主戦場がネットに移行しつつあるが、その中でも注目されているのが。インフルエンサー・マーケティングだ。インフルエンサー(influencer)とは「影響を与える人」という意味で、特にインターネットの世界では消費者発信型メディアにおいて他の消費者に大きな影響を与える人のことを指す。

消費者に影響を与える人を活用する手法としては、有名芸能人を使った推奨型広告が代表的だ。この伝統的な手法に対して、一般消費者の発信力を活用するのが、インフルエンサー・マーケティングだ。従来の推奨型広告では有名芸能人は企業の代弁者としての意味合いが強かったが、インフルエンサー・マーケティングではいち消費者として商品やサービスへの意見を述べる点が大きな特徴だ。

「よしもと」がインフルエンサー・マーケティングに参入

そのようなインフルエンサー・マーケティングでも、最近はモデルやタレントを起用し、彼らのブログやSNSで個人として情報発信をするタイプのものが増えつつある。そのような環境の変化の中で、吉本興業傘下のよしもとクリエイティブ・エージェンシーがインフルエンサー・マーケティングに参入することが発表された。

よしもとには6000人を超えるタレントが所属しており、Instagramで日本最多の600万人を越えるフォロワー数を持つ渡辺直美を筆頭に、SNSにおけるフォロワー総数はTwitterでは4000万人以上、Instagramでは1600万を超え、国内最大規模ということだ。このような影響力をバックに、よしもとにとっては所属タレントの新たな才能である情報発信力をビジネス化するという狙いがあるようだ。

たしかに素人であるネット有名人とは異なり、マスメディアで活躍するホンモノの芸能人・芸人がインフルエンサーとなることで、一般消費者により大きな影響力を与えられそうだ。

インフルエンサー・マーケティングの落とし穴

従来型の推奨広告とインフルエンサー・マーケティングは、著名人の影響力を利用するという意味では非常に似通っているといえる。

もっともこれまでインフルエンサー・マーケティングが注目されていた大きな理由の一つは、比較的安いコストでそれなりの広告効果を出せたということにある。一般消費者へのギャラは微々たるものであるし、それがモデルなどでも多額のギャラが発生することはほとんどなかった。

しかし、有名タレントを使うとなると予算もそれなりに大きく考えざるを得ないだろう。よしもとがどのようなメニューを用意するのかはまだわからないが、意外に大きなコストになるかもしれない。コストと期待する効果とのバランスをどう見極めるかという課題があるだろう。

またインフルエンサー・マーケティングで最も注意しなくてはいけないのが、ステルスマーケティング、いわゆるステマ防止策だろう。インフルエンサー・マーケティングの利点は、広告の体裁をとらずに広告を行うことでより自然に商品やサービスをアピールすることであるが、これは逆に、問題点でもある。「金が払われて書かれている記事は広告であり、その関係性は明示されなくてはならない」という業界でのステマ防止のガイドラインが設けられてはいるが、それ以上に注意しなくては法的リスク以上のトラブルを起こしかねない。

SNSへの投稿に「#PR」や「#AD」といったハッシュタグを入れることがたびたび推奨されているが、このようなタグを見て広告だと理解できている消費者がどれくらいいるのかは大いに疑問だ。多くの人はおそらく、広告として認知していないのではないだろうか。いったん何らかのトラブルが起こり、消費者をだましたかのような印象を与えてしまうと、企業や商品へのネガティブ・イメージを持たれる恐れがあるのは容易に想像できるだろう。まとそれに加担したとして、タレントのイメージも大きく損なわれてしまうので、広告主・タレント事務所双方にはより慎重な運用が求められるだろう。

インフルエンサー・マーケティングに期待すべきこと

最近のアメリカでの研究では、SNSを導線とした直接的なEコマース施策はなかなかうまくいかないというレポートも出されている。また、Twitterは「Buy(購入)」ボタンを廃止しており、Facebookも「Buy」ボタンの設置を取りやめている。InstagramとPinterestも同様に「Buy」ボタンで苦戦している。インフルエンサー・マーケティンでバズっても、それが直接商品購入のきっかけになるとは限らないということが明らかになりつつある。

インフルエンサー・マーケティングの目的としては、直接の購買に繋がらなくても、商品やサービスの認知を高めたいケースや、広告キャンペーン自体の浸透を目指すケース、さらには企業や商品、サービスのブランド価値向上といった様々なものが考えられる。ひと昔前の、「バズ」を起こせばいいという段階からはすでに進化しているのだ。SNSを活用したマーケティングも目的に応じた指標を設けてその効果を測定し、必要があれば都度修正をかけていく柔軟な運用が求められる。

他のマーケティング施策と同じように、インフルエンサー・マーケティングにも強みと弱みがある。インフルエンサー・マーケティングを行う際にはまず、SNSを通じて消費者とのエンゲージメント(関わり)をどう構築するのか、情報流通の仕組みをよく検討すべきだろう。(戸神雷太、 広告業界出身のコンサルタント)

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