米決済情報サイト「Payment.com」が発表した「Gig Work Index(GWI/フリーランス指数)」から、米国でフリーランサーが急増し、米労働市場の35%に達していることなどが判明した。

非正規雇用の拡大が所得格差の原因のひとつという意見も聞かれる中、6割が「フリーランスで満足。正社員にはなりたくない」と回答するなど、労働に対する価値観に変化が現れ始めている。

拡大する「Gig Economy(フリーランス経済)とは?

「Gig Economy」「Gig Work」などという言葉をここ数年で頻繁に耳にするようになった。「Gig」は俗にいうフリーランスを指す。正社員やパート社員の雇用形態とは異なり、特定の雇用先に専従することなく、あくまで独立した立場から請け負った業務を遂行する。フリーランス1本で生計を立てている場合もあれば、あくまで副業という場合もある。

ひと昔前までは翻訳やライター、デザイナーなど特定の職種向けというイメージが定着していたフリーランスだが、クラウドワークや共有経済の発展した近年、「Gig」による経済が着実に拡大している。

近年の代表的な例では配車サービスのUberやLyft、手伝いマーケットサービスのTaskRabbitなどだろう。これらの企業はインターネット、アプリを効率的に活用し、グローバルな共有経済ネットワーク構成に成功。フリーランス経済の拡大に大きく貢献している。

8割が「もっとフリーランスで働きたい」

米フリーランス組合とフリーランス専用求人サイト「Upwork」が2016年、共同で実施した調査によると、フリーランスとして働く労働者は市場の35%に相当する5500万人、総所得は1兆ドル(約113兆9900億円)にのぼるという。

2014年と比較すると1000万人増。「自らの選択でフリーランスになった」回答者も、6000人のうち53%から63%に増えている。非正規雇用が「working poor(働く貧困層)」の要因に数えられている事実と照らし合わせると違和感があるが、これらの回答者の72%が本職あるいは複数のフリーランス職をかけもちしていることを考慮すると、ある程度納得がいく。また所得の40%以上をフリーランス職から稼ぎだしているのは47%しかいない。

それにも関わらず65%が「正社員になるよりもフリーランスでいたい」、81%が「賃金の支払いがもっと早ければ、より多くのフリーランス業務を請け負う」と答えている。

フリーランスの最大の目的は「お金」中間所得平均は2倍

これほどまでに多くの米国人を惹きつけているフリーランスの魅力は何なのか。「高賃金」「時間・仕事・精神的自由」などが最も挙げられる理由だが、GWIではフリーランスを大まかに2つのタイプにわけて分析している。

「副業としてのフリーランサー」と「低学歴が足かせとなり正規雇用が見つけにくいフリーランサー」だ。

両タイプの共通点はフリーランス職がキャリアアップの手段ではなく、純粋にお金を得ることが最大の目的である点だ。51%が「お金」を理由に挙げたのに対し、「時間の自由」と回答したのは23%だ。

実際の平均所得を見てみると、高所得層(8万ドルから10万ドル/約912万円から1140万円)は全体的な米労働者の23%を占めているが、この層に属するフリーランスはわずか10%。対照的に低所得層(2万ドル/約228万円以下)は米労働者のわずか8%だが、フリーランスでは20%に達している。

しかしこの数字だけで「やはりフリーランスの所得は不安定」と決めてしまうのは、大きな誤りのようだ。米労働者の最も多い所得層は2万ドルから4万ドル(約228万円から456万円)で30%がこの層に属しているが、フリーランスでは27%がその2倍に当たる4万ドルから6万ドル(約456万円から684万ドル)を得ている。

「子どもなし・高学歴・働き盛り」が条件?

年齢層では25歳から44歳が最も多く、70%が何らかのフリーランス職に就いている。全体的な米労働者で最も多い年齢層は25歳から34歳層と55歳以上の層が合計46%。その差は歴然だ。

それではレポートで指摘されている「低学歴が足かせとなり正規雇用が見つけにくい」という点ではどうだろう。4年制の大学あるいは大学院卒の割合は、25歳から53歳が最も多く43%だ。18歳から24歳は19%、55歳以上は30%にまで落ちこむ。

つまりフリーランスで最も多い収入を得ているのは、「高学歴の25歳から44歳の働き盛りの層」ということになる。

しかし「単身者(あるいは子どものいない世帯主)」に傾くようで、56%が子供のいる世帯の大黒柱だが、子どもがいる世帯主は44%だ。一家を経済的に支える手段としては、まだまだ正規雇用が根強い人気のようだ。(アレン琴子、英国在住フリーランスライター)

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