桜の頃になると、テレビのニュースなどで各地の花見の様子が映し出される。人気のスポットでは場所取り合戦も激しいようで、早朝からブルーシートを敷いて陣取る若手社員の姿は風物詩のようになっている。
最近では会社行事として花見を行うところが減ってきているように感じるが、実際のところどうなのだろうか。近年の花見事情や、「新入社員の初仕事」と言われた場所取りについて見ていこう。
2017年の花見は減少傾向
インターネットリサーチ会社の楽天リサーチの調査によると、2017年の花見は減少傾向にあるという。今年、花見の予定があるかどうかを聞いたところ、「はい」が36.8%、「いいえ」が26.6%、「未定」が36.6%という結果となった。
2016年の同じ調査では、「はい」が45.1%、「いいえ」が15.0%だったことと比較すると、花見の実施予定者が減少していることがわかる。
この調査は、同社の登録モニターを対象に行われた「花見に関する調査」で、調査対象は全国の20~69歳の男女約1000人。
花見には誰と行くか
調査では、誰と花見に行くかについても聞いている。最も多かったのは71.7%が回答した「家族」だ。次いで「友だち」が32.3%、「会社の同僚や上司」が14.7%、「恋人」が10.1%と続く(複数選択)。
全体調査では上述のような結果だが、年代別の調査結果ではそれぞれ特徴が表れている。20代では「家族」52.5%、「友だち」50.8%、「恋人」25.4%、「会社の同僚や上司」20.3%という順であり、30代では「家族」83.3%、「友だち」26.2%、「会社の同僚や上司」15.5%、「恋人」11.9%の順だった。
20代では「友だち」「恋人」の比率が高いが、30代では「家族」の比率がグンと伸びる。30代では結婚などによって新しい家族が増える人も多いため、このような結果になっていると想像できる。
一方、「会社の同僚や上司」と花見に行く予定がある人は14.7%にとどまった。年代別では、20代が20.3%、30代が15.5%、40代が20.8%、50代が15.3%だ。職場の人たちと花見に行く予定のある人はやはり少なく、全体の2割に満たないことがわかった。
花見のマナー問題
職場での花見に関しては、これまでさまざまな問題が指摘されてきた。
マナーの点で言えば、場所取りの方法や時間帯、宴会での騒音、花見が終わった後のゴミの放置など、多くの問題がクローズアップされている。
2016年には横浜市の公園内で、大手のプラントエンジニアリング会社が数日間にわたり広範囲の敷地にブルーシートを敷き詰めたことが話題となった。これは極端な例ではあるが、各地の公園で場所取りに関するトラブルは後を絶たない。各公園は時間帯の規制など新しいルールを設けて対策しているが、ルールを気にも留めない困った花見客も多い。
花見の歴史と変遷
花見の場所取りに関しては、駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部教授の山口浩氏が「花見の場所取りはいつから批判されるようになったのか」の記事で興味深い考察を行っている。
記事は、日本の花見の起源からその後の歴史について、朝日新聞のデータベースに基づいて丁寧に書かれている。1800年代にはすでに、花見で騒動を起こす人たちがいたという。また、マナー問題の提起、職場単位での行事となっていくさま、そして場所取り合戦の発生など、時代の移り変わりとともに形を変えていく花見の姿についてわかりやすく紹介している。
とくに場所取り問題に関しては、データベースへの登場から問題の深刻化、強くなっていく風当りなどが具体的に示されている。山口教授は、スマホやSNSの普及が批判をする者の声を大きくし、それが場所取りのさらなる逆風となっている、と述べている。
花見の慣習がある職場は9%
今の時代、「新入社員に場所取りを命じたら、パワハラで訴えられるかもしれない」といった心配もあるかもしれない。「業務外だからできません」「休日ですが賃金は発生しますか?」と返してくる社員もいると聞く。新人たちは皆、花見や場所取りを毛嫌いしているのだろうか。
マーケティングリサーチ大手のマクロミルが2016年2月に行った調査では、「職場に花見をする慣習がある」と答えた人は全体の9%にとどまった。調査は一都三県の20~50代の社会人モニター856人に行ったものだが、やはり花見の慣習がある会社は少なくなっているようだ。
職場に花見の慣習がある人に「花見に対する印象」を聞いたところ、「人間関係を円滑にする行事」50.6%、「入社式などと並ぶ公式行事」26.0%、「飲み会の1つ。参加は仕方ない」20.8%という回答が多かった。意外にも花見をポジティブに捉えている人が多いという印象だ。
会社から強制されてネガティブな気持ちで参加する行事の場合、評価も低くなり、次第に淘汰されることになる。しかし、建設的な内容でポジティブに参加できる行事であれば、社員たちの評価も自然に上がってくる。近年では社内運動会を復活させる企業が増えるなど、社内行事が見直されてきている。花見のこれからは、どうなっていくだろう。(渡邊祐子、フリーライター)
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