雇用統計,利上げ
(写真=PIXTA )

2017年3月10日、米国労働省は2月の雇用統計(速報値、季節調整済み)を発表した。非農業部門の雇用者数は前月比で23万5000人増となり、19万人程度とされていた事前予想を大きく上回った。3月14~15日に開催される米国FOMCで利上げをする確率が一段と高まった。

ポジティブな内容が目立った雇用統計

非農業部門雇用者数だけで無く、他の数字もポジティブな内容が並んだ。失業率は前月比0.1ポイント減の4.7%で、市場予想通りとなった。また労働参加率も63.0%となり、2014年3月以来の63%台となった。労働意欲のある者が増えている中での失業率の改善は米国経済の力強さを表している。1月の非農業部門雇用者数が速報値から上方修正された事も朗報である。

完全雇用状態に近いとされる中、今後の雇用統計の焦点は賃金の上昇に移る。平均時給は26.09ドルと前月比0.2%増となったが、市場予想の0.3%増には届かなかった。今回の雇用統計でケチがつく数少ないポイントである。今後は労働者数が増える中で、賃金が力強く伸びてくるかが注目される。

3月利上げはほぼ確定の状況に 市場の注目はその先へ

2月の雇用統計の結果を受け、3月14~15日のFOMCで利上げが行われる事はほぼ確定と見られる。米ウォールストリート・ジャーナル紙は「力強い雇用統計で、3月利上げの道が開く」と報じた。米国消費者物価上昇率等、他の指標を見ても、3月利上げを妨げるような材料は見当たらない。報道・シンクタンク各社は3月利上げ確率を軒並み90%以上と予想している。

市場の関心は3月利上げの先へ移り、6月のFOMCで更なる利上げを行うかどうかの議論が活発となっている。6月利上げは非常に重要なポイントである。FRBのイエレン議長は2017年中の利上げ回数は3回であると示唆している。6月に利上げを行えば、予想より多い年4回利上げの可能性が出てくる。米ゴールドマン・サックスは雇用統計発表後、年内利上げ時期を3月、6月、9月に実施するとの見方を示し、12月に4回目の利上げを行う可能性も高いとしている。

また、FRBのバランスシート「正常化」の開始時期に対する関心も高まっている。FRBは3度の量的緩和で膨らんだ保有資産を「正常化」させる議論にも着手していくと見られる。今回の雇用統計等、好調な米国経済を映す指標が多く出ており、「正常化」は近いうちに始まるとの予想も増えている。米ゴールドマン・サックスは2018年半ばとしていた「正常化」開始の予想時期を2017年末と前倒しした。米国経済は好調を維持しており、今後は利上げの議論と併せて「正常化」の議論も活性化していく。

米国経済の好調を受け、利上げを行った結果、それが経済好調の証明となり更なる好調を生むという非常に良い循環が起きている。しかし、本来利上げは経済の過熱を抑える効果がある。利上げペースの増加や「正常化」の開始によって、今の好循環の流れが変わらないかどうかも市場は注意する必要がある。(ZUU online編集部)

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