AI,自治体,地方創生
(写真= Zapp2Photo /Shutterstock.com)

AI(人工知能)の活用が民間企業に広がる中、地方自治体でも本格導入に向けて実証実験に入るところが出てきた。千葉市が2月からAIを利用した道路管理システムの実験を始めたほか、大阪市は今秋にも戸籍関連業務でAIを職員支援に活用する。札幌市はインターネット経由の問い合わせにAIが文字で自動応答するシステムの開発を進める計画だ。

本格導入が進めば自治体業務の効率化が図れるだけでなく、住民サービスの向上にもつながる。2017年は自治体にとってAI元年になるかもしれない。

千葉市は道路の損傷を自動診断

千葉市の実証実験は東京大生産技術研究所との共同研究で、システムの名称は「マイシティーレポート」。千葉市の呼びかけに応じ、北海道室蘭市、千葉県市原市、東京都足立区も参加している。

公用車に取りつけたスマートフォンで道路を自動撮影し、共有サーバーに画像を転送。AIが道路状況を「損傷なし」「損傷はあるが、修繕は不要」「修繕が必要」--の3つに分類し、修理の必要性を判断する仕組みだ。

各自治体の職員がAIの判断が妥当かどうかチェックしたうえで、学習用サーバーにデータを蓄積し、システムの精度を高める。職員による目視点検より効率が上がるほか、広い範囲の道路状況を把握できる利点も持つ。

マイシティーレポートには、市民が街のインフラの状態を投稿できる機能を備える。千葉市は2014年度、市民が歩道や公園の損傷をスマートフォンで撮影して市に報告する「ちばレポ」を導入している。この仕組みを参考に市民からの情報提供をシステムに採り入れる。

実証実験は2019年3月まで続ける計画。千葉市は2019年度以降、ちばレポのデータをマイシティーレポートに一本化。全自治体共通の市民協働プラットフォームとして全国に広げる考えを持っている。

千葉市広報広聴課は「道路や橋など公共インフラは、バブル期以前に建設したものが老朽化する。新システムが実用化されれば安全点検の効率化が図れ、迅速な対応が可能になる」と期待している。

大阪市では戸籍業務の審査を補助

大阪市の実証実験は今秋から、東淀川区と浪速区で進められる。市の2017年度一般会計当初予算案に4900万円が計上された。順調に進めば2018年度に両区で本格導入し、2019年度から市内24区に広げる方針だ。

事業名は「職員の知恵袋」。国際結婚や養子縁組など審査が必要な申請があった場合、職員が「~の場合はどうすればいい」などと入力すれば、AIが蓄積した政令や判例の情報の中から最適な回答案を端末に示す仕組み。同時に確認が必要な項目も表示する。

戸籍事務では、審査が必要になると関係法令や過去の判例を調べたり、法務局に問い合わせたりしていた。経験が豊富な職員でないと、対応にどうしても時間がかかるが、このシステムが実用化されれば判断のスピードアップを図れる。

購入先の業者を夏ごろまでに選定し、システム構築や蓄積している回答案の精度を高める作業を進める。当面は戸籍事務に限って実験を進めるが、効果があると確認されれば、他の専門知識が必要な業務にも拡大を検討する。

大阪市ICT戦略室は「AIに導き出した答えが正しいかどうかも学習させて精度を向上させ、業務の経験年数に関係なく職員が迅速に対応できるサービスを実現したい」と意欲的だ。