札幌市はチャットで自動応答のシステムを開発

札幌市は実証実験の前段階として2017年度一般会計当初予算案に1500万円を計上、自動応答システムのシステム開発に入る。実証実験の時期は未定だが、順調に進めば早期に実用化したい考え。

札幌市コールセンターには、電話やメールで寄せられた市民からの質問と回答が約140万件残っている。これを基に市内の企業に委託して自動応答システムの試作版を開発する。

受託企業はAIの反復学習を進め、文字で会話するチャット形式の入力フォームから税金や開発計画など質問項目を入力すると、コールセンターの職員が回答するのと同じ情報を自動表示できるようにする。

札幌市はIT関係の企業が多いが、ビッグデータの提供先が少なく、開発の機会が少ない。このため、地元企業に開発経験を積んでもらい、業界の振興を図る狙いもある。札幌市IT・クリエイティブ産業担当課は「市民サービスの向上とともに、地元IT企業の育成にも役立てたい」としている。

小規模自治体でも業務の効率化に有効

自治体の行政需要が拡大し、制度の複雑化が進行している。業務の効率化は待ったなしの課題といえるが、効率化できたのはこれまで、マニュアル化が可能な定形業務が中心だった。

しかし、AIを活用すれば、経験や判断が必要な非定型業務を取り込むことができる。住民1人ひとりの問い合わせや相談に的確な情報提供が可能だ。職員1人が複数の業務を受け持つ小規模自治体でも、実現は難しくない。

AIの活用を本格的に広げるには、導入の障壁となる制度面の見直しやセキュリティー対策、ICTプラットフォームの標準化など、乗り越えなければならない課題が残る。だが、大都市でスタートしたこれらの取り組みを全国に広げていけば、自治体の業務が大きく変わりそうだ。

高田泰 政治ジャーナリスト この筆者の 記事一覧
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。