非課税資産を活用する
4つ目も一般的な固定資産税対策として、非課税資産を活用する仕方を説明します。この方法に限り、他の固定資産税対策と異なり、対象となる箇所は固定資産税が全額免除されます。固定資産税には第2章で説明した様に評価額全額が課税対象外になる「非課税資産」なるものが存在しています。これは土地と建物の両者に適用可能です。
まず、学校法人・宗教法人等が保有する固定資産は非課税資産になります。だからと言って、節税するだけの目的に置いて、これらの組織を設立するのは横車を押す様な話です。しかし、個人、または、一般企業等が保有する固定資産であっても公益性が高い資産、具体的として児童公園は非課税資産として認められます。
また、道路も非課税資産として認められます。実際には利用区分に応じて分筆登記する必要がありますが、実際に道路として認められれば固定資産税が非課税になります。道路として認められるには「幅が1.8m以上」「他の公道に通じている」等の所定の用件が必要になりますが、無関係な人間が公道と同じ様に通行している場合、公益性が高い土地と認められて固定資産税が非課税になる可能性が高い様です。そして、幅が4m未満の公道沿いの土地に関しては、建て替え時に2mバックして土地を公道に貸し出す必要がありますが、上記の場合と同様に固定資産税が課税されなくなります。
固定資産税を減らすには、これらの非課税資産を最大限活用するのが得策です。マンションを建てました時、土地が余ってしまった様な場合、余った土地を児童公園等に転用すると良いでしょう。また、マンションとマンションの間の土地を道路として開放するのも効果的です。
減価償却して帳簿を合わせる
最後は減価償却して帳簿を合わせる仕方を説明します。固定資産税自体を減らせなくても他の税金を減らせれば固定資産税を減らすのと同じ効果が得られます。具体的には固定資産を購入して法人税を減らしますが、それには企業を設立する必要があります。と言うのも、企業が10万円以上の固定資産を購入する場合、それを損金として計算するのではなく、減価償却ぶんを毎年損金として計上する規定になっています。固定資産を購入した会計年度は赤字の方が多くなっていると思いますから、その赤字決算の一部を来年以後に繰り越す感覚で節税します。また、社用車も経費として認められますが、あくまでも業務として使用している自動車でなければ社用車として認められないため、その点に注意が必要です。
モデルケースとして、耐用年数40年間のマンションを1億2000万円で購入する場合を説明します。この場合、毎年300万円ずつ損金として計上できますから、法人税を約120万円減らせます。標準税率では固定資産税が144万円増えますが、第3章で説明した小規模住宅用地の特例を用いれば24万円まで減額されます。また、固定資産税も会社経費から落とせるため、黒字を生じている限り、固定資産税の約40%(約9万6000円)が減免されるのと同じ意味になります。ですから、このモデルケースでは年間100万円以上節税できます。
総合して対策する方が効果的
今まで説明してきた節税対策には一長一短あります。それに、必ずしも常に全ての方法が適用可能とは限りません。例えば、帳簿上の土地面積が正しければ前述の対策で減税することはできません。一番簡単なのは住宅関係の特例ですが、他の方法と組み合わせる方が一層効果的、固定資産税を約10分の1に減らせます。ですから、対策を色々組み合わせる方が良いでしょう。課税対象となる土地面積はほとんど減らせなかった反面、その土地の評価額は大きく下がったと言う話がよくあります。1つ1つは小額でも色々組み合わせれば大量に節税することが可能です。また、複数の対策を組み合わせることにより、初めて本来の進化があらわれる対策もあります。
そもそも、新しく道路を設ける場合、分筆登記しなければ非課税資産として認められないし、減価償却を採用する場合、小規模住宅用地等の特例を用いなければ固定資産税が重くなる結末も考えられます。ですから、固定資産税を節税する場合、一部のみ見て早とちりするより、第1章~第5章の内容を全て把握してから適切な方法を考える方が満足する結果が得られると思います。