50歳まで一度も結婚したことがない人の割合を出した「生涯未婚率」は、上昇傾向が続いている。結婚に対しては、「給料をすべて自由に使えなくなるのはイヤ」「趣味の時間がとりにくくなるのはイヤ」など、消極的な意見が多く聞かれるが、結婚することで経済的なメリットが生じる場合もある。

結婚して一緒に暮らすことで得られる家計のメリットとは?

結婚生活老後貧乏,お金持ち
(写真=PIXTA)

それぞれが一人暮らしをしているカップルの場合は、一緒に住むことで家賃や光熱費などを1本にできるので、一人あたりの負担額は安くなる。しかも、一人で住む部屋よりも広い部屋を借りることができるだろう(家賃は2倍まで上がらない)。

女性が専業主婦になる場合、会社員や公務員の夫の扶養になれば、妻は社会保険料(国民年金年金保険料、健康保険料)を納付せずにすむ。夫の扶養になっている間は、「第3号被保険者期間」といって、国民年金保険料を払っているとみなして将来受け取れる年金額が計算されるし、健康保険も保険料をはらっている人と同じく3割負担(義務教育就学後~70歳未満までの割合)で使える。それに、少なくなってきているが、会社によっては配偶者手当がつく場合もある。

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夫婦でお金の話をできないとゆくゆくは老後破産に?

お金の話は、聞きにくい、言い出しにくいという意識が強く、あまり話したことがないというカップルも多いようだ。これから生計を一にするもの同士がお互いの収入や貯蓄がどのくらいあるのかを知らないのは危険すぎる。結婚してみたら、相手に借金があったなどという話もよく聞く。結婚するときには、お金についてよく話をすることがいちばん大事。ここでしっかり話をしておかないと、ズルズルとお互いが消費してしまい、貯蓄ができないまま老後を迎えることになり、それが家計破綻にもつながっていく。

家計管理の基本は、収入から先取り貯蓄の分を引いて、残ったお金で生活すること。使う前に貯蓄をしてしまう貯蓄法で、自動積立型の預金などで行うのがおすすめだ。最初はお互いの手取り収入からそれぞれ最低1~2割以上の先取り貯蓄をし、残りを生活費と自分の小遣いにする。多ければ多い方が良い。

ただし、「先取り貯蓄を1割できていればいい」というわけでもない。たとえば、手取り月収25万円同士の夫婦が月に2万5000円ずつ、合計5万円の貯蓄をしていても、将来の目標がマイホームの頭金600万円貯めることなら、そのために10年かかってしまう。目標額や目標の時期に応じて貯蓄ペースを考えよう。

まずは家計の内容を共有することが大切だ。家計簿をつけていない人が大半だろうから、給与明細と預金通帳で、収入と貯蓄の額を把握するところから。そして、先取り貯蓄の額を決めてまずお互いが貯め始める。

貯めるときは、それぞれの名義の通帳に貯めよう。3組に1組が離婚する時代では、いつ離婚するかわからないし、マイホームを買うときは、それぞれ出した割合で持ち分比率を決めればいい。「先取り貯蓄で貯めたものは生活費に使わない」というルールは死守しよう。生活費の中からもっと貯蓄できそうなら、先取り貯蓄の額を増やしていこう。

夫婦でお金の話をするときのポイントは、お互いのことを非難しないこと。非難し合うと節約しよう、貯蓄しようというモチベーションが下がる。何のためにお金を貯めるのか、目的を共有しつつ貯めていこう。そうしていれば、この分を節約してもっと貯蓄に回そうといった前向きな話ができるようになる。

お金の話をして共通の目的のためにがんばって貯蓄をしてきた夫婦は、老後の生活をどうするかという話も自然とできるから、老後を迎えたときにお互い「こんなはずじゃなかった」というふうにはならない。夫婦が非難し合ったり、違う方向を見ていては、なかなかお金は貯まらない。

マイホーム資金、教育費、老後資金など比較的大きなお金は、必要になってから貯めようとしても間に合わない。子どもが生まれる前の共働きの時期などは絶好の「貯めどき」。貯めどきを意識して、早めから貯蓄を始めることが必須だ。

晩婚・晩産化は、家計への影響も大。独身時代は自分の収入はほとんど使ってしまい、結婚したら貯めようと思っても、消費行動が変えられなかったり、40歳過ぎて子どもを産むと子どもの独立が60歳を過ぎてしまうことも。晩産には、教育費を使い切ったあとに老後資金を貯める時間がとれないというリスクがある。結婚や出産が遅くなるなら、その分独身時代からお金を貯めておくなどの戦略を持たないと、老後になって家計破綻に至る可能性が大きい。

結婚時に大きな買い物をしない 無理ない範囲で考える

結婚にこうしなくてはならない、ということはない。最近は、派手な挙式を行わない「ジミ婚」や、婚姻届の提出のみをする「ナシ婚」も増えている。自分たちの希望と経済力に合った結婚をし、その後の生活を充実させる方向で考えていくのが堅実な選択だろう。お金がないのなら、彼や彼女が今住んでいる部屋で一緒に住む、イマドキは実家に居候するもありだと思う(少しは家賃として親に払おう)。

いちばんやっていけないことは、結婚と同時にマイホームを買うこと。どのくらいの収入でどのくらいの貯蓄ができるかわからないうちに多額の住宅ローンを組むのはリスクが高すぎる。買うのなら、家計のようすを把握して、ある程度の貯蓄が確実にできて頭金がいくらか出せるようになってから。

共働きのときに夫婦で収入合算してローンを借りた場合、子どもが生まれて妻が仕事をやめることになると、夫一人の収入で返済していくことが苦しくなる。住宅ローンを組むときは、そのあたりの生活の変化を考えたうえで判断しよう。

2人のほうが逆境にも立ち向かえる

結婚してからも何かと親に援助してもらっている人もいるようだが、基本的には、親から自立して自分の世帯を持つのが結婚。親もいつかは亡くなる。多分、自分より先に。いつまでも親に頼ることはやめて、世帯主として暮らしていくプライドを持とう。

結婚するのなら、夫婦お互いが支え合える関係が望ましい。長い人生を一緒に過ごすうえでは、気持ちが弱ったり、仕事がうまくいかなかったり、病気になったりという局面が出てくる。そういうときに頼れる相手であるか、相手がそうなったときに支えられる自分であるか。一人では、いくらがんばっても弱い面がある。家計の担い手は多い方が心強い。

結婚相手を誰にするかで、その後の人生は大きく変わる。女性なら、エリートサラリーマンかフリーターかでは、結婚生活がだいぶ違う(どちらが幸せかはまた別の話だが)。

男性であれば、モデルのような妻と結婚したら、年々美容にかかるお金が増え続けていったとか、料理上手な妻で、節約と健康維持を両立させられているなど、妻となる人の才覚や性格で夫の人生も変わってくる。特にお互いどんな金銭感覚を持っている人なのかは大事。そのあたりを見極めて、不安のない結婚生活をスタートさせよう。

生島典子(いくしま・のりこ) フリーライター
投資信託の運用会社、出版社勤務(マネー誌、生活情報誌を担当)を経て独立し、2004年よりライター・編集者として活動。主な執筆テーマは、マネー(家計、保険、住宅ローン、教育費など)、子育て、住まい、働き方など。好きなことは、出産と住宅ローン。3人の子どもを助産院で出産した経験あり。子どもを持つ保護者として、学童クラブの父母会活動、PTA活動にも参加。「居場所づくり」がこれから考えていきたいテーマ。

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