(写真=PIXTA)
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ウォール街における業界用語に、テンバガーというものがある。本来は野球の世界で用いられてきた言葉で、「1試合で通算10塁打」といった大記録を達成することだ。

ウォール街のテンバガーとは

ウォール街に転用されたテンバガーは「株価が10倍に化けた銘柄」を意味する。10倍というと滅多にない上場幅のように感じるかもしれないが、アベノミクス相場開始後、日本にもテンバガーがいくつか誕生している。

いったい、どのような銘柄の株価が短期間のうちに高騰しているのだろうか。過去3年間にテンバガーと化した銘柄を分析し、どのような特徴や共通点があるのかを探ってみよう。

過去のテンバガーの紹介

2015年の年間上昇率

2015年における株価の年間上昇率 (前年取引最終日の終値と当年取引最終日の終値を比較) は、約15倍の「フューチャーベンチャーキャピタル」がテンバガー入りを果たした。上期の経常利益が黒字に浮上したのが好感された側面もあるが、市場において特にホットなテーマとなった自動車の自動運転に関連する銘柄だったことも影響していたようだ。

ちなみに2015年最安値からの上昇率で見ればコスメサイトの「アイスタイル」の株価が10倍超に化けている。2014年最安値からの上昇率で見れば「サイバーセキュリティ」関連のFFRIなども株価も10倍超、PC向けやスマーフォン向けゲームを制作している「ガーラ」にいたっては約25倍上昇している。こうした短期急騰パターンも含めれば、テンバガーは少なからず存在しているのだ。

2014年の年間上昇率

続いて2014年だ。「アドテック プラズマ テクノロジー」は年間上昇率こそ約7.6倍だが、2014年最安値と2014年最高値の上昇率は20倍となった。やはり好業績が材料となったとの見方もあるが、リニア関連銘柄として物色されたことも大きいかもしれない。

自動運転に関連して急上昇したのは「アイサンテクノロジー」。2013年最安値から2014年最高値の上昇率でテンバガーを達成している。なお同社は、2014年最安値から2015年最高値の上昇率でも再びテンバガー銘柄となっている。

2013年の年間上昇率

さらに日経平均株価が5割以上上昇した2013年は、年間上昇率でもテンバガーが続出している。例えば「アドウェイズ」、「日本マイクロニクス」 、「ユナイテッド」、「フライトHD」、「ビリングシステム」などがテンバガーになっている。

テンバガーの共通点は何か

このような、テンバガーとなる銘柄に共通しているのは、市場における注目度の高さだ。旬のテーマやキーワードに関連していたり、突発的なニュースが材料視されたり、多くの投資家が関心を寄せるようになる何らかのきっかけを持ち合わせている。

加えて、大型株の範疇に入るほど、時価総額がまだ大きくなかったことも共通していると言えよう。裏返せば、発行済み株式数もそれだけ限られており、大型株と比べて値が飛びやすいわけだ。

こうしたことから、相場全体が冴えない局面であっても、高い話題性を有する中小型株はテンバガーと化す可能性を秘めていると言えそうだ。もっとも、これらの特徴はリスクとも表裏一体だと言えよう。なぜなら、話題性が高いということは、陳腐化して投資家が関心を示さなくなるのも早いということだ。また、流動性が低いということは、株価が急騰しやすい反面、急落もしやすいことを意味する。

値動きが激しいからこそ、投資家が夢見るテンバガーとなる可能性がある。一方で、大きな痛手も被りかねない。テンバガーとなる銘柄は、相場全体の情勢に関わらず、個々の要因で株価が反応するケースが多いようだ。これからは、テンバガーも意識すると、投資の選択肢も増えるのではないだろうか。(提供: 大和ネクスト銀行