Pモルガン・チェースやサンタンデール銀行などがブロックチェーンを基盤とした投票システムの概念実証に成功した。株主総会や役員選挙など、幅広い分野の投票で透明性と効率性を高めると期待されている。

また米スタートアップVoatzとClear Ballotは、ブロックチェーン型選挙投票システムの開発に乗りだしている。スマホから安全性の高い遠隔投票が可能になれば、強力な「選挙離れ」対策になるかも知れない。

株主総会などの議決権行使をブロックチェーン化

このプロジェクトには、JPモルガン・チェース、サンタンデール銀行、投資家向けFinTechソリューションを提供している米ブロードリッジ・ファイナンシャル・ソリューションズ、米ウェルス・マネージメント企業、ノーザン・トラスト が参加した。

ブロードリッジのウェブサイトの報告によると、ブロックチェーン技術で「委任状による国際議決権行使(会議・議会などで議案に対する賛否を表明すること)」の透明性と分析を向上させる意図で実施された。

株主総会などの議決権行使に関しては、現在日本も含めインターネットによる投票が法的に認められている 国も多い。受託資産運用などでは投資運用業者が受益者の経済的利益創出を最優先事項に、受託者責任の一環として用いられるべきとされており、いかなるケースでも透明性と健全性の高さが重要となる。

イーサリアムのプラットフォームを採用

ブロードリッジのシニア・ヴァイス・プレジデント、ビジェイ・マヤダス氏は、「ブロックチェーンで既存の議決システムの複雑性を軽減し、高質で効率性に優れた議決環境に完全できる」 との確信のもと、このプロジェクトを成功させた。

株主総会開催日の通知から始まり、あらゆる投票プロセスをブロックチェーンで記録することで、透明性が飛躍的に高まるはずだ。

実験は年次株主総会とサンタンデール・インベストメントの協力を得て、クリプトグラフィー(暗号化技術)とスマート・コントラクト技術を基盤とするイーサリアムのプラットフォームを用いて行われた。

サンタンデールのブロックチェーン・ラボ責任者、ジュリオ・ファウラ氏 は、ブロックチェーン技術が透明性だけにとどまらず、企業や機関顧客にも恩恵をもたらすことが、「実験をとおして立証された」と結果に満足感を示している。

スタートアップが開発中の「ブロックチェーン型不在者投票システム」

一方米マサチューセッツ州北東、ボストンを拠点とするブロックチェーン・スタートアップ、Voatzとソリューション・ソフトウェアのClear Ballot は、共同でブロックチェーン型不在者投票システムの開発に挑んでいる。

各国によって多少の差はあるものの、一般的に不在者投票制度は投票所に行けない有権者が、投票期限日以前に管理下にある場所あるいは現在地で投票できる制度である。

スマホやタブレットを利用した遠隔投票が実現すれば、こうした不在者投票制度の利用者だけでなく、若者の「選挙離れ」を食いとめる対策になると期待されているが、安全性とアクセスの確立という点で懸念が残る。大量の不在者投票を、安全かつすみやかに処理できるシステムが必須だ。

両社はVoatzのブロックチェーン技術を用いて、デバイスからの投票を安全にできるオープンソース型ブロックチェーン・プラットフォームを開発した。すでに昨年、複数のテストを成功させたほか、今年2月には全米州務長官協会と全米州選挙管理者協会に、開発結果を実演している。

Voatz のニミット・ソーニーCEOは開発を次の段階に移行させるうえで、「エンドツーエンド(通信を行う両者間の)検証、有権者の匿名性、認証、セキュリティー、コスト、開発のしやすさ、スケーラビリティー、ユーザー経験などの改善が必要になる」と今後の課題を挙げている。

Clear Ballotのラリー・ムーアCEOは、両社の提携関係が未来の投票システムの構成に大きく貢献すると確信している。「有権者はデバイスを通して投票用紙を受けとり、投票場にはデバイスひとつで向かうことができる」だけではなく、ブロックチェーンを使えば将来的には投票場に出向く必要すらなくなるかも知れない。ブロックチェーンが投票システムの歴史を塗り替える日はすぐそこまで来ている。(アレン琴子、英国在住フリーランスライター)

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