21歳以上の米国成人2100人を対象に実施した調査から 、年収10万ドル(約1089万円)以上の若年層(21歳から34歳)が、債務不履行におちいる懸念が最も高いことなどが判明した。米国では負債総額の膨張とともに、中間所得・高所得層間の合計4割が「1年以内にローンの返済ができなくなる」と不安感をあらわにしている。

UBSはリスク回避対策として、「代替投資(オルタナ投資)やオートローン、クレカ企業などへの投資を避ける」よう、投資家に警告を発している。

年収1000万でも3割が負債返済の自信なし

この調査はUBSが2014年11月から2017年3月の期間中、9回にわたって行ったものだ。調査結果からは、特に中間所得層と年収10万ドル以上の高所得層の負債が急激に膨張していることがわかる。

「今後1年以内に債務不履行におちいる」と確信している消費者は、総体的には17%と昨年の米大統領選以前と比較すると5ポイント増えている。年収4万ドル(約434万円)以下の層で懸念を示しているのは10%にも満たないが、4万ドル10万ドル以下の層では16%、10万ドル以上の層では26%まで上昇する。

年代的には大都会で暮らす21歳から34歳の過半数、35歳から44歳の31%が「ローンの返済滞納」の心配をしている。それ以上の年代になると、懸念は最高7%にまで一気に低下する。

負債に圧迫される一方で2軒以上の不動産を所有

大都会に住み華やかな生活を送る高所得の若者の間で、これほどまでに負債問題が深刻化している要因は何だろう。

負債への懸念が高い層ほど住宅の所有率が77%と高いが、41%が住宅ローン、31%が持家担保ローン、16%がクレジットカードの返済をかかえている。また住宅ローンに関しては38%が変動金利型、8%が元金一括返済型を選択している。

返済への不安に駆られながらも、これらの負債者の61%が2軒以上の物件を所有しているというから驚きだ。しかし55%が「支出が収入を上回っている」ことを認めている一方、57%が失業や所得の減少への不安感にさいなまれている。

UBSは調査報告書をとおして、FinTechの跳躍で急激に需要が伸びている「代替投資やオートローン、クレカ企業などへの投資を避ける」よう、投資家に警告を発している。

代替融資の「借りやすい環境」が悲劇を生みかねない?

計画性に欠けた借金を重ねるという行為の責任は、当然ながら借りる側にある。しかし融資の際に利用者の経済状況を審査の基準にいれることは、融資側の責任義務の一部とされている。借り手の返済能力を判断するだけではなく不必要な負債を防止するという意味で、結果的には借り手にとってもプラスとなる。

しかしFinTechの普及により、こうした従来の融資基準が形を変えつつある 。例えばこれまで金融機関が顧客に融資を行ううえで、借り手が個人の場合はクレジットスコア(欧米で広く採用されている経済力を数値化したシステム)、企業であれば創業年数・業種・資産価値などが融資金額や金利決定の指標となっていた。

ところが代替投資では「融資審査の不公平性を軽減する」意図で、スマホの利用状況 から借り手の返済能力を分析するなど、過去ではなく現在・未来に焦点を当てた審査法が用いられることも珍しくはない。

多くの代替融資企業がテクノロジー分析による融資審査を看板にしているが、各社が審査に利用しているアルゴリズムに関しては、その精密度への疑問も挙がっている。

ひとことでいえば、金融機関よりも融資を受けやすい環境が売りになっている反面、若者を始めとする様々な層が多額の負債に苦しむ原因となりかねないというわけだ。

エマニュエル・クリーバー米下院議員 は代替投資のリスクに懸念を示すと同時に、代替融資企業に計画性のある融資を行うよう呼びかけている。消費者に計画性のある借りいれを呼びかけるだけではなく、融資側にも「計画性のある融資」が必須となりそうだ。(アレン琴子、英国在住フリーランスライター)

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